栃木県障害者差別対応指針 障害者差別解消のための道しるべ 栃木県 令和6年4月 目次 はじめに T指針を活用される皆様へ  1障害者差別解消のポイント  2障害者差別の解消に向けた心がけ  3障害者差別の解消が進むと U障害者差別解消を推進するための基本理念  1等しく基本的人権を享有する個人として全ての県民の尊厳が重んぜられること及びその尊厳にふさわしい地域生活を営む権利が尊重されること  2障害及び障害者に関する理解を深めること  3地域社会を構成する多様な主体が、相互に協力すること V障害者と社会的障壁  1障害者とは  2社会的障壁とは  3事業者とは  4障害や社会的障壁は一人ひとり異なります W障害者差別解消の基本  1不当な差別的取扱いとは  2不当な差別的取扱いの具体例  3合理的配慮とは  4障害ごとの特性と合理的配慮の具体例   (1)身体障害   (2)知的障害   (3)精神障害   (4)発達障害   (5)高次脳機能障害   (6)難病   (7)重症心身障害・その他医療的ケアが必要な障害児(者)   (8)多くの障害者に共通する合理的配慮  5様々な分野における合理的配慮の具体例 X障害者差別を解消するために  1その人のことを知りましょう  2対話をして歩み寄りましょう(建設的な対話)  3お互いの理解が大切です  4説明と納得が重要です  5環境の整備をしましょう おわりに 参考資料 栃木県障害者差別解消推進条例 栃木県障害者差別解消推進条例施行規則 栃木県障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例 障害者基本法(抄) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 障害者に関するマーク 栃木県における障害者差別に関する相談窓口とあっせん はじめに  障害の有無にかかわらず、誰もが共に支え合う社会を実現することは、誰もが自らの意思によって、地域で安心して暮らし、個性や能力を発揮することができる社会の実現であり、私たちが暮らす社会をより活力あるものにします。  しかし、「人権の世紀」といわれている21世紀においても、障害や障害者に対する誤解や偏見といった理解の不足などにより、障害を理由とする差別が残っています。  国連においては、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、平成18年に「障害者の権利に関する条約」が採択されました。  この条約では、「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」のスローガンの下、障害者自身が意見を述べ、その考えが反映されました。  我が国では、平成19年の条約署名に際し、障害者等から、「条約の締結に先立ち、国内法の整備を始めとする障害者に関する制度改革を進めるべき」との意見が寄せられ、障害者基本法の改正(平成23年)、障害者総合支援法の成立(平成24年)、障害者差別解消法の成立と障害者雇用促進法の改正(平成25年)など、一連の制度改革が進められました。そして、平成26年1月20日、日本は141番目の締約国として条約に批准しました。  栃木県では、これらの動きや県内の障害者差別の状況を踏まえ、「共生社会とちぎ」の実現のためには、障害者差別解消に向けた積極的な取組をする必要があると考え、「栃木県障害者差別解消推進条例」を平成28年3月に制定し、同年4月から施行しました。また、令和4年3月には、合理的配慮の中で最も重要な、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図るため、「栃木県障害者コミュニケーション条例」を制定し、同年4月から施行しました。さらに、障害者差別解消法の改正(令和3年)を踏まえ、令和5年12月に、事業者による合理的配慮の提供を義務付けること等のため、栃木県障害者差別解消推進条例の改正を行い、令和6年4月から施行しました。  障害者差別は、障害者が直面する場面や状況によって、また、一人ひとり異なる障害の特性や年齢などによって、多様かつ個別性が高いものであることから、場面や状況、その人に応じた配慮(合理的配慮)が必要です。  また、障害者差別は、家族や支援者など障害者との関わりが特に深い人が気をつければ解消するものではなく、障害者が、学校で学ぶ、仕事をする、買い物をする、余暇を楽しむ、電車やバスに乗るなど社会参加する全ての場面において発生しうるものであり、全ての県民が解消に向けて協力して取り組んでいくことが必要です。  この「障害者差別対応指針」は、全ての県民及び事業者(企業や団体など)が障害者差別解消を推進するための具体的な行動につながる「道しるべ」として、栃木県障害者差別解消推進条例の規定に基づき、障害者差別解消を推進するための基本的な考え方や障害に関する基礎的な知識、障害者差別解消のための手がかりを記載したものです。  全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、支え合う共生社会の実現のため、多くの方々にこの指針を活用していただき、それぞれの立場から差別解消の取組を進めていただきたいと考えています。 令和6年4月   T 指針を活用される皆様へ 1 障害者差別解消のポイント  障害者差別を解消するには、私たち一人ひとりが個人として尊重され、障害や障害者について理解を深め、相互に協力して取り組んでいくことが必要です。  具体的には、「障害者差別解消を推進するための基本的な考え方」や「障害に関する基礎的な知識」を前提として、障害者と「対話する」「相互に理解する」「協力して工夫する」ことで、障害者差別解消が推進されます。  この指針のUからWでは、障害者差別解消を推進するための基本的な考え方を、また、 W「4 障害ごとの特性と合理的配慮の具体例」では、障害に関する基礎的な知識を、「5 様々な分野における合理的配慮の具体例」では、各分野で特徴的なバリア(困りごと)と、それを取り除くための合理的配慮の具体例を記載しました。  そして、Xでは、障害者と「対話する」「相互に理解する」「協力して工夫する」ための手がかりを記載しました。  また、指針は相談事例や社会における障害者差別解消への考え方、取組の進展によってレベルアップさせていく必要があります。  そのため、栃木県障害者差別解消推進委員会などの意見を頂きながら、より良い指針とするために内容を見直していきます。 2 障害者差別の解消に向けた心がけ  障害者差別の解消を推進するに当たり、障害者と「対話する」「相互に理解する」「協力して工夫する」ためには、次のことが大切です。 全ての県民及び事業者が取り組むことが大切です  障害者がその人らしく生きるためには、学校で学ぶ、仕事をする、買い物をする、余暇を楽しむ、電車やバスに乗るなど全ての場面において社会参加ができなければなりません。  そのため、障害者の家族や支援者、行政だけが取り組むのではなく、私たち一人ひとりや企業など全ての県民及び事業者が協力して取り組みましょう。  全ての県民及び事業者が場面・状況に応じて考え工夫していくことが大切です  障害者は一人ひとり異なり、場面や状況によっても、困っていることや必要とされる対応は異なります。  この指針は、障害者差別解消を推進するための「道しるべ」であり、決まった対応をするためのマニュアルではありません。 障害者の意思を尊重することが大切です  困っていることを自ら解決しようとしている人もいます。このようなときは、その人の意思を尊重し、見守ることも大切です。  また、困っていることを伝えられない人もいます。そのような人を見かけたときは、いきなり手助けをするのではなく、「こんにちは、何かお困りですか?」と声をかけてみましょう。そして、その人の意思を確認し、尊重しましょう。  一方、困っているかもしれない人に声をかけ、配慮をしようとすることは、大変勇気がいることです。しかし、たとえ配慮が必要ない場面で声をかけたとしても、配慮しようというやさしい気持ちが伝われば、その気持ちが社会に広がっていくのではないでしょうか。 3 障害者差別の解消が進むと  障害者差別解消の取組が日常的に広く行われるようになることによって、障害者の社会参加が進み、私たちが住む地域社会は、より活力あるものとなります。  さらに、障害者への配慮が、まちづくりやものづくり、情報を円滑に取得・利用しやすくするための情報のバリアフリー化、人と人との関わり方などに行き届けば、障害の有無にかかわらず、全ての人が暮らしやすい、誰もが共に支え合う社会に近づきます。  例えば、障害者に配慮したひとにやさしいまちづくりは、障害者のみならず高齢者や妊産婦をはじめとする私たち誰もが住みやすいまちづくりです。  障害者にもわかりやすい情報提供は、誰もがわかりやすいものですし、障害者に配慮した対応ができれば、大きな怪我をしている人、体調がすぐれない人などにも配慮することができるようになります。  障害の有無にかかわらず、全ての県民及び事業者が、この指針を道しるべとして、「共生社会とちぎ」づくりを進めていきましょう。       U 障害者差別解消を推進するための基本理念  「栃木県障害者差別解消推進条例」(以下「条例」という。)では、次のとおり障害者差別解消を進めるための基本的な考え方(基本理念)を定めています。 (基本理念) 第3条 障害者差別の解消は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人として全ての県民の尊厳が重んぜられること及びその尊厳にふさわしい地域生活を営む権利が尊重されることを基本として推進されなければならない。 2  障害者差別の解消は、障害及び障害者に対する誤解、偏見その他理解の不足の解消が重要であることから、全ての県民及び事業者が、多様な人々により地域社会が構成されているという基本的認識の下に、障害及び障害者に関する理解を深めることを基本として推進されなければならない。 3  障害者差別の解消は、地域社会を構成する多様な主体が、相互に協力することを基本として推進されなければならない。 1 等しく基本的人権を享有する個人として全ての県民の尊厳が重んぜられること及びその尊厳にふさわしい地域生活を営む権利が尊重されること  私たちは、一人ひとり、様々な個性や特徴を持っており、誰一人として同じ人はいません。体の大きさや運動能力、好きなことや得意なことなどは、人によって様々です。また、生まれた地域や育った環境が異なり、生き方や考え方も違います。 そのような「差異」を見つけて、ことさらに強調し指摘する必要はあるのでしょうか。  それよりも、一人ひとりの「個性」を知り、ときに共感・感心し、あるいは意見や行動の違いがありながらも相手を認めること、つまり、個人として認め合い、互いに尊重することが重要ではないでしょうか。  このように個人としての尊厳が重んぜられることにより、私たちの自由や平等が守られ、地域で自分らしく暮らしていくことができるものと考えます。  一方、差別は、私たちの尊厳を否定するものであり、絶対に許されるものではありません。私たちは、等しく基本的人権を享有する個人として全ての県民の尊厳が重んぜられること及びその尊厳にふさわしい地域生活を営む権利が尊重されることを基本として、障害者差別の解消を推進していく必要があります。  【ワンポイント】    障害があってもなくても、私たちは等しく基本的人権を享有する個人として固有の権利が   あります。互いの個性を認め合い、尊重し合うことが大切です。 2 障害及び障害者に関する理解を深めること  障害者差別の多くは、障害や障害者に対する誤解や偏見など、障害や障害者のことをよく知らないことが原因となっています。  そのため、障害者差別をしないように、又は、起こしてしまった障害者差別を解消するためには、障害の有無にかかわらず多様な人々が地域社会で暮らしているということを基本として、障害や障害者について理解を深めることが必要となります。  【ワンポイント】    障害者のことをよく知らないためにしてしまった、次のような対応があります。  ・店員が、手話がわからないために注文を取ることができないと思い、聴覚障害者の飲食店の   入店を断った。   →メニュー表の指さしや筆談などでも注文を受けることができます。  ・てんかんの人は、急に発作を起こして倒れるかもしれないので、イベントへの参加を断った。   →発作のあらわれ方は人により異なります。また、薬を飲むことで、発作を抑えることも    できます。      このようなことが起きないよう、障害及び障害者に関する理解を深めることが大切です。 3 地域社会を構成する多様な主体が、相互に協力すること  私たちが暮らす地域社会は、多様な個性を持った人たちが暮らしています。そのような人たちの様々な考え方や意見を尊重し、認め合うことが重要です。  しかし、障害者と障害者ではない人とが、差別される側と差別する側に分かれて、互いが言いたいことを一方的に主張しているだけでは、障害者差別の解消は進みません。かえって、関係が悪くなり、地域社会がバラバラとなってしまうのではないでしょうか。  そのようなことがないよう、障害の有無にかかわらず、地域社会に暮らす私たち一人ひとりや企業、団体、行政などが互いの立場を認め合い、相互に協力して障害者差別を解消していくことが必要です。  このとき、障害者であっても、他の障害や障害者に関する理解を深め、相互に協力していくことが重要です。  障害の有無にかかわらず、互いの立場を認め合い共に協力していくことができる社会が、私たちが目指す「共生社会とちぎ」です。  【ワンポイント】    障害の有無にかかわらず、地域社会に暮らす私たち一人ひとりや企業、団体、行政などが、 互いの立場を認め合い、相互に協力して障害者差別を解消していくことが大切です。 V 障害者と社会的障壁 条例では、次のとおり「障害者」、「社会的障壁」、「事業者」という言葉の意味を定めています。 (定義) 第2条 この条例において「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 2 この条例において「社会的障壁」とは、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 3 この条例において「事業者」とは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第2条第7号に規定する事業者のうち、県の区域内において商業その他の事業を行う者をいう。 1 障害者とは  この条例において、「障害者」とは、身体障害や知的障害、発達障害や高次脳機能障害を含む精神障害、さらには難病などにより障害のある人で、社会がつくり出している壁(社会的障壁)により、学校で学ぶ、仕事をする、買い物をする、余暇を楽しむ、電車やバスに乗ることなどに相当な制限を受けている人のことをいいます。  身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っている人、身体障害児者と精神障害者を対象とする自立支援医療や指定難病に係る医療費助成制度の対象となっている人だけが「障害者」ではありません。           (参考) 栃木県内の身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の所持者数 107,734人(R5.4.1現在) 栃木県内の自立支援医療・重度心身障害者医療・指定難病医療費助成制度の受給者数 87,115人(R5.3.31現在) 2 社会的障壁とは  私たちの社会は、障害のない人を前提として、建物などが造られ、制度やルールが決められていることがほとんどです。  障害のある人は、そのような建物、制度、ルールなどを使うことが難しいことがあります。  また、私たちの社会には、「障害者は誰かに面倒を見てもらわなくてはならない」とか「行儀よくできないのは、親のしつけに問題がある」といった、障害のある人に対する誤解や偏見があります。  そのような誤解や偏見があるために、障害のある人が自由に活動できないことや、公平に対応さ  れないことがあります。  このような、障害のある人が日常の様々な活動や社会参加をする上で妨げとなる、社会における事物、制度、慣行、観念などを社会的障壁といいます。 このような社会がつくり出している障害者への壁は、たくさんあります。 【ワンポイント】 社会的障壁として、次のような例が挙げられます。 ・建物に入るとき、ドアを手で開けて中に入ります。 → 多くの人が、手でドアを開閉できることを前提にしています。 ・契約をするとき、書類に本人のサインを求められます。 → 多くの人が、文字の読み書きができることを前提にしています。 ・説明をするとき、言葉を声に出して説明します。 → 多くの人が、声を聞くことができ、言葉の意味を理解できることを前提にしています。 ・「障害者は誰かに面倒を見てもらわなくてはならない」という思い込みがあります。 → 障害者であっても、合理的配慮や周囲の支援によって、自立した生活を送っている人が     たくさんいます。      こういった思い込みにより、付添人を求めたり、付添人だけと話をしたりするなど、     一人の人間として障害者と向き合っていないことがあるのかもしれません。     3 事業者とは  この条例における「事業者」とは、栃木県内で事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービス等を反復継続する意思をもって行う者です。個人事業主やボランティア活動をするグループなども「事業者」に入ります。   4 障害や社会的障壁は一人ひとり異なります  身体障害といっても、手や足などに障害がある肢体不自由、内臓機能に障害がある内部障害、聞くことに障害がある聴覚障害、見ることに障害がある視覚障害、言葉を話すことや理解することに障害がある音声機能や言語機能の障害などに分かれます。  例えば、そのうち視覚障害といっても、まったく見えない、暗いところでは見えづらい、明るいところでは見えづらいなど、人によって状態はそれぞれです。  まったく見えないという障害であっても、点字が読める、パソコンが使えるなど習得した知識や技術などにより、社会的障壁が異なります。 このように、障害や社会的障壁は、一人ひとり異なります。  また、聴覚障害や高次脳機能障害、難病など、外見では障害がある人かどうかわかりにくい人もたくさんいます。  このような人たちは、障害があることを理解されないために、誤解を受けたり、社会参加に必要な配慮が受けられなかったりすることがあります。  【ワンポイント】 障害や社会的障壁は、一人ひとり異なります。 また、外見では障害がある人かどうかわかりにくい人もたくさんいます。 W 障害者差別解消の基本 条例において、障害者差別を解消するため、次の2つのことを定めています。 「不当な差別的取扱いをしないこと」 「合理的配慮をすること」 障害者差別をしないために、それらは、どのような行為なのかを知る必要があります。 1 不当な差別的取扱いとは 条例において、何人も「不当な差別的取扱い」をしてはいけない と定めています。  また、「不当な差別的取扱い」について、国が定めた「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(令和5年3月14日閣議決定、以下「基本方針」という。)では、基本的な考え方を次のように説明しています。  障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害すること  車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する  不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある  条例において、基本方針と同様に、「不当な差別的取扱い」を(1)正当な理由なしに、(2)障害があることだけを理由として、(3)障害者を障害者ではない人よりも不利に対応することとして、次のように考えます。 (1)正当な理由なしに  「正当な理由なしに」とは、障害者に対する対応に関し、他の人と異なることについて、多くの県民がやむを得ないと納得できる、具体的で客観的な理由がないことです。  障害者に対し、「何が起こるかわからないので、危険な可能性がある」「他の人に迷惑がかかるおそれがある」といった、漠然とした理由で、不利な対応をしてはいけません。  一方、多くの県民がやむを得ないと納得できる、具体的で客観的な理由があると判断した場合は、そのことを丁寧に説明しなくてはなりません。そして、障害者に納得してもらうように努めましょう。   【ワンポイント】 基本方針において、納得できる理由(正当な理由)を、次のように説明しています。 正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者 の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生 の防止等)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、 具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。   (2)障害があることだけを理由として  「障害があることだけを理由として」とは、他の人と異なる対応をすることについて、身体障害や知的障害、精神障害、難病など、障害があることだけを理由としていることです。  【ワンポイント】    障害の有無にかかわらず、全ての人に対して同じように対応することは、「障害を理   由とする不当な差別的取扱い」には当たりません。  ・泥酔した障害者に対し、施設の利用を断った。   → その施設において、障害の有無にかかわらず、泥酔した人の利用を断るのであれば、    障害があることだけを理由とした対応にはなりません。   (3)障害者を障害者ではない人よりも不利に対応すること  「障害者を障害者ではない人よりも不利に対応すること」とは、お店で物を売ることや地域・企業が開催するイベントへの参加を断ること、施設を利用する時間や利用できる場所を制限すること、保護者の同行を条件にすることなどにより、障害者を障害者ではない人よりも不利に対応することです。  障害者が、日常の様々な活動や社会参加をする上で困っていることを解決するため、状況を確認し解決しようとすることは、障害を理由とする対応ですが、不利に対応することではありません。その際、プライバシーに配慮することや不必要なことを聞かないことなどに注意しましょう。  【ワンポイント】  このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なしに、障害があることだけを理由として、障害者を障害者ではない人よりも不利に対応することです。  不当な差別的取扱いをしないこととは、多くの県民が納得できないような「不公平なことは しないようにしよう」ということではないでしょうか。 2 不当な差別的取扱いの具体例  以下には、代表的な不当な差別的取扱いの例を記載しました。全てを網羅しているわけではなく、類似する様々な不当な差別的取扱いがあることに留意が必要です。 また、以下の例は、いずれも多くの県民が納得できる理由(正当な理由)がないことを前提とし  ています。   (1)福祉サービス ・その場にふさわしい行動をとることが困難となる行動障害があることや、痰の吸引などの医療的ケアが必要というだけで、施設利用を制限すること。 ・ホームヘルプサービスなどを利用しようとするとき、障害があることだけを理由に断ること。 ・障害のあることを理由に、保育園入園のための見学を断ること。 ・車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として、サービス提供を拒否すること。 (2)医療 ・医療機関や薬局において、人的体制、設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、障害があることを理由に診療・入院・調剤等を拒否すること。 ・障害があることを理由に、常に家族が付き添うことや、個室に入ることを入院の条件とすること。 ・障害があることを理由に、治療の方針や内容を説明しないこと。 ・車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として、治療を拒否すること。 (3)教育 ・障害があることを理由に、入学試験の出願の受理や入学を断ること。 ・障害があることを理由に、授業、遠足や修学旅行などの校外学習への参加について、保護者と十分に話し合うことなく付添いを条件にすること。 ・障害特性に応じ試験時間を延長するなどの合理的配慮の提供を受けたことを理由に、試験の結果を学習評価の対象から外したり、評価において差をつけたりすること。 ・車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として、教育機会の提供に差をつけること。 (4)公共施設・公共交通機関 ・車椅子利用者がバスや鉄道を利用しようとするとき、乗車できる場所や時間帯を制限すること。 ・障害者がタクシーを利用しようとするとき、障害者の呼び止めに応じないこと。また、障害者であるとわかると、乗車を拒否すること。 ・障害があることを理由に、体育館やプールの利用を断る、又は支援者の同行を条件にすること。 ・車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として、乗車やサービスの利用を拒否すること。 (5)不動産取引 ・精神科に通院歴があることを理由に、アパートを紹介しない、又はアパートを貸さないこと。 ・障害者が、一人暮らしをすることを理由に、アパートを貸さないこと。 ・「見えないからいいだろう」として、視覚障害者に、壁の汚れのクリーニングや照明器具の修理がされていないアパートを紹介すること。 ・車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として、物件の内覧を拒否すること。 (6)商品の販売やサービスの利用 ・障害者の特性や状況を説明し、店側の対応が可能であるにもかかわらず、利用を断ること。 ・障害者が団体で遊園地の乗り物に乗るときに、一人で乗れる状態であるにもかかわらず、必ず支援者が同乗することを条件にすること。 ・融資や投資信託などの金融商品の取引について、自分で署名できない、上肢に障害のある身体障害者や視覚障害者の利用を認めないこと。 ・車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として、入店を拒否すること。 (7)労働 ・薬を飲むことで症状が落ち着いているにもかかわらず、うつ病やてんかんがあることのみを理由に、就職を断る、又は内定を取り消すこと。 ・障害があることを理由に、会社を辞めさせること。 ・採用するときに障害の状態を聞き、その状態でできる業務をすることを確認していたにもかかわらず、一方的に別の仕事を割り振ること。 ・車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用を理由として、求人募集の対象外とすること。 (8)意思表示 ・契約やサービスに関する重要事項説明について、視覚障害者が内容の説明を求めても、拒否すること。 ・公共施設や駅、ショッピングセンターなどで音声によるアナウンスの内容について、聴覚障害者から説明を求められても、説明することを断ること。 ・予約申込みに際し、方法を電話連絡のみとして、聴覚障害者等からのファックス等による申込みを拒否すること。 ・障害者が支援者と一緒に説明を受けているとき、本人を無視し、支援者に対して全ての説明や確認をすること。 (9)行政 ・役所で手続きをするとき、「障害者だから説明してもわからない」と決めつけ、詳しい説明をしないこと。 ・公営住宅を申し込むとき、必要のないことまで細かく確認したり、周囲に迷惑をかけないように念押ししたりすること。 (10)個々の県民 ・障害があることを理由に、地域で行うイベントへの参加を断ること。 ・腹部に排泄のためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した人(オストメイト)が入浴しようとするとき、ストーマ装具を必ず装着する等のルールやマナーを守っているにもかかわらず、本人や施設等に抗議して利用させないようにすること。 3 合理的配慮とは 条例において、次のように定めています。 県、事業者は「合理的配慮」をしなければならない 県民は「合理的配慮」をするように努める  また、「合理的配慮」について、国が定めた基本方針では、基本的な考え方を次のように説明しています。  個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うこと  この基本方針と同様に、県では条例の中で「合理的配慮」を(1)そのときの状況に応じて、障害者が障害者ではない人と同じように社会参加する上で(2)困っていることを伝えられたとき、(3)過重な負担のない範囲で、(4)困っていることをなくすための取組をすることとして、次のように考えます。 (1)そのときの状況に応じて 障害者が困っている理由は、そのときの状況に応じて様々です。 そのときの状況に応じて、必要な配慮を考え、工夫することが大切です。  【ワンポイント】 障害やその人の性別や年齢、できることや周囲の状況により、困っていることは様々です。 その人に応じた対応をすることが大切です。 参照:V「障害者と社会的障壁」(P5) (2)困っていることを伝えられたとき  障害者が、日常の様々な活動や社会参加をする上で困っていることを伝える方法は、その人の障害によっても様々です。  手話や点字が用いられることもあれば、簡単な言葉のつなぎ合わせ、身振りや手振りが用いられることもあります。  また、家族や支援する人が、障害者の言葉を代弁して困っていることを伝えることもあります。 本人の意思を尊重すること、家族や支援する人にもよく確認することが大切です。 【ワンポイント】  条例において、県は、困っていることを伝えられたか否かにかかわらず、困っている 障害者がいたら、合理的配慮をすることとしています。  これは自分が困っていることを人に伝えることが難しい人もいることから、支援が必要 かどうかを積極的に本人に確認し、必要な合理的配慮をしていくことを定めたものです。 (3)過重な負担のない範囲で 困っていることがわかったら、過重な負担のない範囲で、できる限りの取組をしましょう。  「過重な負担のない範囲」とは、多くの県民がやむを得ないと納得できる、負担になりすぎないものです。負担になりすぎると判断した場合は、そのことを具体的・客観的に説明しなくてはなりません。そして、障害者に納得してもらうように努めましょう。    【ワンポイント】 基本方針において、過重な負担の考え方を次のように説明しています。  個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  その際は、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。    ○事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)    ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)    ○費用・負担の程度    ○事務・事業規模   ○財政・財務状況 (4)困っていることをなくすための取組をすること  この取組とは、障害者が日常の様々な活動や社会参加をする上で困っていることを解消するため、スロープを渡すなどの物理的環境への配慮、筆談、読み上げ、手話などを使うことやわかりやすい表現をするといったコミュニケーションへの配慮、ルールや慣行の柔軟な変更などの工夫をすることです。   【ワンポイント】  合理的配慮は、障害者が、障害者ではない人と同じ条件で社会参加ができるようになるために実施するものです。  ルールや慣行を柔軟に変更することも、決して特別扱いをすると考えるのではなく、障害者が障害者ではない人と同じスタートラインに立つことができるようになると考えましょう。    例えば・・・  ある施設や学校などを利用する自閉スペクトラム症の人から、自分で飲むための飲み物を持参してよいかと申し出があった。しかし、その施設では持ち込みを禁止していることから、特別扱いとなるのではないかと考えている。 → 自閉スペクトラム症の人には、特定の味や感覚が極端に苦手であり強いストレスを感じる人もいます。そのため、特定の飲み物しか飲むことができない人もいます。  ルールを柔軟に変更することにより、その人がその施設などを利用するという社会参加するためのスタートラインに立つことができます。  このように合理的配慮とは、ルールの柔軟な変更も含め、多くの県民が納得できる無理のない範囲で「たのまれたら 手伝おう」ということです。 4 障害ごとの特性と合理的配慮の具体例 以下には、代表的な障害やその特性、合理的配慮の具体例を記載しました。  合理的配慮をするためには、あらかじめ障害ごとの特性や具体例を知っておくことで、障害者に適切な配慮ができるようになります。  また、障害のある女性は、障害があることに加えて女性であることにより合理的配慮の提供を申し出る場面等において機会が均等に得られない場合があること、障害のある性的マイノリティについても同様の場合があること、障害のあるこどもには、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることについて理解する必要があります。 なお、この指針の活用に当たり、以下の点に注意してください。 ・全ての障害を網羅しているわけではないこと、複数の障害が重複することもあり、一人ひとり異なること。 ・合理的配慮の具体例は、状況に応じて実施することが望ましいと考えられる例を記載しており、一律に実施すべきものではないこと。 ・記載している具体例以外にも、場面によって適切と考えられる合理的配慮があること。 ※ 多くの障害者に共通する合理的配慮の例については、P29に記載しています。 (1)身体障害  身体障害とは、身体の機能に障害がある状態で、肢体不自由、内部障害、視覚障害、聴覚障害などに分けられます。 令和5(2023)年4月1日現在、栃木県において70,179人が、身体障害者手帳を所持しています。 ○ 肢体不自由 肢体不自由とは、事故や病気などにより、手足や体の機能に障害が生じている状態です。 歩く、座る、手や指を使って作業をする、話すなど、日常の様々な動作が難しい人がいます。 また、表情が思うようにならない人や、体温や血圧の調節が難しい人もいます。 <接するときに> ・車椅子や松葉づえなどを使っている場合  狭い通路やわずかな段差でも大きな妨げになります。また、お店などでは、ドアの開閉や高い場所、低い場所の物を取ることが難しい場合があるので、その人に応じた配慮をしましょう。  段差解消や手すりを付ける、車椅子利用者の膝がテーブルの荷物置きにぶつからないテーブルを用意するなどの、バリアフリー化や利用しやすくなる環境の整備も重要です。 ・手や指などに障害がある場合  文字を書く、お金を取り出すなどといった、手や指を使う細かな作業をすることに不便を抱えている人がいます。手助けが必要かたずねるなど、その人に応じた配慮をしましょう。  また、スムーズに話すことが難しい人がいます。筆談のためのメモやボードを使って、用件を確認しましょう。     <合理的配慮の具体例> ・移動の妨げになる物を動かす、本人の希望を確認して車椅子を押す、ドアの開閉を手伝う、手の届かない場所の物を代わりに取る、段差にスロープを渡すこと。 ・筆談のためのメモやボードを使うなどして、用件やどのような配慮が必要かを確認することや、代筆すること。 ・本人に確認し、部屋の温度を調節する、膝掛けを渡すこと。また、学校や職場などで体温調節しやすい服装の着用を認めること。 ・受付窓口等が別のフロアであり、移動が難しい場合、移動しやすい別室やテーブルで用件を聞くこと。 ・体育の授業の際に、上・下肢の機能に応じてボール運動におけるボールの大きさや投げる距離を変えたり、走運動における走る距離を短くしたり、スポーツ用車椅子の使用を許可したりすること。 ・車椅子利用者がバスに乗車するとき、乗車のためのスロープを出すこと。他の乗客へのアナウンスにより、必要な配慮を促すこと。 ・タクシーを利用するとき、車椅子や荷物をトランクに収納したり、乗降時の補助をしたりすること。 ・机の配置や打合せ場所を工夫するなどにより、職場内での移動の負担を少なくすること。よく使う書類などを手の届きやすい高さの棚に移すこと。 ・入浴介助や排泄介助をする場合、同性の職員が実施するようにすること。 【ワンポイント】  視覚や聴覚、手足や体の機能に障害のある人をサポートする盲導犬、聴導犬、介助犬をまとめて、身体障害者補助犬といいます。  身体障害者補助犬はペットではなく、障害者のパートナーであり、様々な場所に同伴することができます。  身体障害者補助犬法では、身体障害者補助犬を同伴する障害者の入店などを断ってはいけないとしています。「犬だから」という理由で受入れを拒否しないでください。 また、街なかで身体障害者補助犬を見かけても、触ったり、食べ物を与えたりしないでください。気が散ってしまい、一緒にいる障害者が危険になることがあります。常に障害者をサポートしようと注意を集中させていることをご理解ください。   ○ 内部障害 内部障害とは、内臓機能に障害が生じている状態です。  心臓や呼吸器、膀胱・直腸、腎臓などの内臓機能が低下しているため、疲れやすかったり体力が低下していたりします。 <接するときに>  内部障害は、外見ではわかりにくく、周囲の人に理解されにくい障害です。そのため、障害による疲れや体調の悪さを感じていても、周囲の人に言えずにいることがあります。外見ではわからない障害があることを理解し、手を貸す、席を譲るなどの配慮をしましょう。  お腹に排泄のためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した人(オストメイト)が、温泉などで入浴しようとすると、不衛生であるという誤解を受けることもあります。ストーマ装具を必ず装着するなどのルールやマナーを守って入浴すれば、便・尿などの排泄物が漏れたりすることもなく、衛生上の問題はありません。 <合理的配慮の具体例> ・仕事や時間がかかる契約の説明をするとき、本人の体力や体調に応じて、休憩を挟むこと。 ・建物内のオストメイト対応トイレの場所を確認し、案内すること。 ・酸素吸入が必要な人に、酸素吸入器のための電源の使用を認めること。 ・呼吸器機能障害者に配慮し、禁煙や分煙を行うこと。 ・人工透析が必要な人に、通院や安静にするために必要な休憩などを認めること。 ○ 視覚障害  視覚障害とは、見えづらい、まったく見えないなど、視覚に何らかの障害が生じている状態です。「見えづらい」には、「細部がよくわからない」「見える範囲が狭い」など、様々な状態があります。  また、相手の表情や身振りがわからないため、コミュニケーションを図る上で誤解が生じることもあります。 <接するときに>  困っている様子のときには、まず声をかけてください。声をかけるときには、前方から本人に伝わるように行います。説明や案内をするときは、具体的な言葉を使いましょう。  また、駅のホームや道路などで視覚障害者が危険な状況にいるときは、急いで声をかけ、安全なところに誘導し、そのことをきちんと説明しましょう。  点字ブロックは、視覚障害者が歩行するための重要な道しるべです。点字ブロックやその周辺に、物を置いてはいけません。  見え方は人それぞれであることから、本人に確認し、字の大きさや印刷する紙の色を変える、照明器具の活用や座席位置の変更により、見やすい明るさ(暗さ)を確保するなどしましょう。 <合理的配慮の具体例> ・周囲の状況を伝えるとき、「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指さし表現や指示代名詞を使わず、「あなたの正面」「○メートル」などと具体的に説明すること。 ・聞き取りやすいよう、明瞭に話すことや、マイクを使うときに反響を少なくするようにすること。 ・本人の希望やパソコン等の利用状況を確認し、点字や拡大文字、音声データや音声コード、テキストデータで情報を提供すること。 ・まぶしいと見えづらい人や暗いと見えづらい人がいることから、本人に適切な明るさを確認し、適した照明器具を活用したり座席の位置を変更したりすること。 ・物やおつりを渡す、食事を提供するときに、「こちらは何々です」と伝えて、その物やお金を手渡したり、食器、コップ等を手に触れさせたりすること。 ・タブレット端末等を利用して注文をする店において、口頭で注文を受けること。 ・通路や点字ブロックの上にある通行の妨げとなる物を、取り除いたり、置かれることのないよう注意を促したりすること。 ・視覚障害者が日頃から使用している物の位置を、変えないようにすること。 ・視覚障害者がタクシーから降りたとき、目的地に向かっているか見届け、必要に応じて声をかけ、適切な場所まで案内すること。 ・授業で使用する教科書や資料、問題文を点訳又は拡大したものやテキストデータを事前に渡すこと。 ・入学試験や採用試験において、点字や拡大文字、音声読み上げ機能の使用等を許可したり、試験時間を延長したりすること。 ・机の位置や打合せの場所を工夫するなどにより、職場内での移動の負担を軽減すること。 【ワンポイント】   視覚障害者とのコミュニケーション手段には、次のようなものがあります。 どのような方法をとればよいのか、本人に確認しましょう。 ・点字、拡大文字(22〜28ポイント程度、太ゴシック)の文書 ・音声による読み上げ、デイジーや音声を録音した CD などの音声データ  デイジーとは、録音データなどに目次や章などに該当する区切りを設定することで、聞き手が容易に目的の箇所を探せるように工夫されたデータ形式です。 ・音声コード  音声コードとは、専用の機器やスマートフォンアプリなどを使って音声で読み上げができる2次元コードです。 ・パソコン音声読み上げソフトにより利用可能なテキストデータ  テキストデータとは、文字だけの情報です。パソコンの読み上げ機能には、様々なものがありますが、テキスト形式(「○○.txt」メモ帳形式)であれば多くの場合で対応しています。 ○ 聴覚障害  聴覚障害とは、聞こえづらい、まったく聞こえないなど、聴覚に何らかの障害が生じている状態です。聞こえ方は様々で、補聴器や人工内耳※等を装着している人もいます。また、日常の言語として「手話」を使用している人もいます。 ※ 人工内耳は、最も普及している人工臓器の一つです。音を電気信号に変え、内耳に埋め込まれた電極を直接刺激し聴覚神経に伝えることで、聞こえを補助する機器です。聞き取りの向上にはリハビリが必要不可欠です。 <接するときに>  聴覚障害は外見ではわかりにくく、周囲の人に気づかれにくい障害です。このため、呼びかけやあいさつなどを無視していると誤解されることがあります。 音で情報を得ることが難しいため、困っている様子のときには、筆談などで確認しましょう。  聞こえを助ける補聴器や人工内耳をしていると、大きすぎる声は聞き取りにくくなるため、その人の前方から、普通の声の大きさでゆっくりはっきりと話しかけましょう。 また、口の動きを見て言葉を読み取る人もいるため、マスクなどを外して話しましょう。 <合理的配慮の具体例> ・本人の希望を確認し、筆談や手話などを用いてコミュニケーションを図ること。 ・受付窓口などにおいて、口元が見えるよう、マスクをかけずに対応すること。 ・ファックスやメールで、店や宅配物の再配達に関する予約の受付、サービスを受けるための説明や相談などを行うこと。 ・手話通訳や要約筆記が適切にされるよう、はっきり、大きな声で話したり、通訳がされているか確認しながら話したりすること。手話通訳者や要約筆記のスクリーン近くに、席を用意すること。 ・病院の待合室や商品受取窓口などにおいて、振動式の呼出器を使って呼び出すこと。 ・学校の授業等において、教員は黒板の板書をしながら話をしないようにすること。読話ができるよう、口元が見えるよう生徒の方を向いて話すこと。 ・外国語の授業におけるリスニング活動の際に、音質・音量を調整したり、文字による代替問題を用意したりすること。 【ワンポイント】聴覚障害者とのコミュニケーション手段には、次のようなものがあります。 どのような方法をとればよいのか、本人に確認しましょう。 ・筆談(紙に書く、手のひらや空間に指で文字を書く) ・要約筆記(話の要点をまとめ、紙やスクリーンに表示する) ・手話(手や指、表情、体で表現する視覚言語) ・読話(相手の口の動きで言葉を読み取る) ・電話リレーサービス(聞こえない人と聞こえる人を、オペレータが通訳して電話でつなぐサービス) ・スマートフォンやタブレットなどの電子機器の活用※ ※ 一部のアプリでは、発話した内容を文字にする、画面に指で文字が書けるなど、筆談を補助するものもあります。 ○ 盲ろう(視覚と聴覚の重複障害)  視覚と聴覚の両方に障害のある人を「盲ろう者」といいます。盲ろう者は、触覚や残された視力、聴力を活用してコミュニケーションをとりますが、会話やテレビ、ラジオを楽しむことも難しいため、情報が極端に限られてしまいます。 また、外出するときは、通常、家族や通訳・介助員が同伴しています。 <接するときに>  盲ろう者は、残された視力・聴力の状態や、盲ろうとなるまでの経緯が様々であるため、コミュニケーション方法もその人に応じて様々です。  話をするとき、どのようなコミュニケーション方法がよいか、早さや話しかける向きは適切かなど、本人や家族、通訳・介助員と相談し、本人にとってより伝わりやすい方法で話しましょう。   <合理的配慮の具体例> ・本人の希望や状況を確認し、音声、手のひら書き、手話(接近手話、触手話などを含む)、拡大文字による要約筆記、点字(指点字などを含む)を用いてコミュニケーションを図ること。 ・本人の希望や状況を確認し、話をするときのスピードをゆっくりにする、伝わっていない点がないかを確認しながらコミュニケーションを図ること。 ・一人で困っている様子のとき、まず声をかけ、反応がないときは、驚かせないよう軽く肩を叩くなどしてから、手のひら書きなどにより状況を確認し、必要に応じて安全なところへ誘導したり、同伴する人を探したりすること。  【ワンポイント】    盲ろう者とのコミュニケーション方法には、次のようなものがあります。  ・手のひら書き   → 手のひらに指などで文字を書いてコミュニケーションをとります。  ・接近手話、触手話   → 接近手話は見える範囲に近づいて手話を行うことで、触手話は、手に触れて、表わ    している手話の形を手で読み取ることで、コミュニケーションをとります。  ・指点字   → 点字タイプライターのように、盲ろう者の指を叩いてコミュニケーションをとります。    また、盲ろうとなるまでの経緯により、次のような人がいます。  ・最初に視覚障害者となり、その後、盲ろう者となった人   → 音量や聞きやすい方向などを確認した上で音声による会話ができる人や、点字が読    める人、指点字ができる人もいます。一方、手話(接近手話や触手話)によるコミュ    ニケーションが難しいです。  ・最初に聴覚障害者となり、その後、盲ろう者となった人   → 手話ができる人や、接近手話、触手話ができる人もいます。一方、点字によるコミ   ュニケーションが難しいです。 ○ 音声機能や言語機能の障害 ・構音障害  構音障害とは、口唇・舌・歯等の構音器官の構造や機能に異常があるために生じる障害で、正確な発音や発声が難しい状態です。 <接するときに>  言葉がはっきりしないからといって、こどもに対するような接し方をしては、本人を傷つけることになります。急かさずに、ゆっくりと最後まで聞きましょう。  聞き取れた言葉を復唱し、わからない言葉を言ってもらったり、話題から推測して質問するなどしましょう。 <合理的配慮の具体例> ・筆談をする、「はい」「いいえ」で答えられる質問をするなど、本人の状態に応じて必要なコミュニケーション手段を用いること。 ・相手と対面して話を聞いたり、集中して話を聞くことができるよう、テレビや音楽の音を小さくしたり、静かな個室で話を聞くこと。 ・失語症  失語症とは、脳梗塞や脳出血などにより脳の言語機能の中枢が損傷されることにより、言語機能が正常に働かなくなった状態で、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことがうまくできなくなる障害です。人によって症状のあらわれ方は様々です。 <接するときに> ・会話相手の言葉や話の内容を理解することが難しい場合  ゆっくりと短い言葉やわかりやすい表現を使って話す、身振りで示す、図やイラストを用いて説明するなどしましょう。ひら仮名より漢字の方が伝わりやすいことがあります。 ・自分が伝えたいことをうまく言葉にできない、又は、違う言葉になってしまった場合  「はい」「いいえ」で答えられる質問をする、伝えたいことを推測してメモを書くなどして確認しましょう。 ・文字を読んで理解することが難しい場合 図やイラストを用いて、文字に頼らなくても理解できるよう工夫しましょう。 ・文字を書くことが難しい場合 書きたい文字や内容を推測し、確認しながら代筆しましょう。 <合理的配慮の具体例> ・ゆっくりと短い言葉やわかりやすい表現、図・イラストを用いる、「はい」「いいえ」で答えられる質問をするなど、本人の状態に応じて必要なコミュニケーション手段を用いること。 ・本人の希望に応じて代筆すること。 ・仕事をするとき、失語症により難しくなった能力をあまり必要としない業務内容を割り振ること。 【ワンポイント】 失語症は、高次脳機能障害とともに症状があらわれることがあります。  失語症の障害のみではなく、高次脳機能障害の主な症状である集中できない、覚えられない、思い出せない、計画が立てられない、感情のコントロールができないなどの障害もあることがありますので、それらについても丁寧に対応する必要があります。 詳細は、高次脳機能障害(P25)を参照してください。 (2)知的障害  知的障害とは、おおむね18歳までに知的な機能の発達に障害が生じている状態で、何らかの支援が必要です。  障害の状態は一人ひとり異なります。それぞれの人の発達を理解した支援によって、仕事や日常生活を送ったり、余暇を楽しんだりすることができます。 令和5(2023)年4月1日現在、栃木県において19,606人が、療育手帳を所持しています。 <接するときに>  わかりやすく短い言葉や、身振りを使ったり、具体的な物を見せたりするとコミュニケーションがとりやすくなります。 文章は、漢字にルビをふったり、イラストなどをつけたりするとわかりやすくなります。  苦手なことも小さなステップに分け、繰り返すことで、取り組むことができるようになり、本人の意欲向上にもつながります。  周囲の理解や支援があれば、「できること」が広がり、一人ひとりの「よさ」が活かされるでしょう。 <合理的配慮の具体例> ・暗黙の了解であっても主語などを省略しない、抽象的な言葉を使わずに具体的な言葉を使って説明する、二重否定や比喩を使わない、ルビをふる、簡潔な文章にする、分かち書き※にするなどして、わかりやすい表現を使うこと。 ※ 「分かち書き」とは、単語や文節の区切りに空白を挟んで記述することです。 ・本人の理解度に合わせて、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明すること。 ・仕事の手順を細分化する、見てわかる工夫をする、実際に物や作業の様子を見せるなど、具体的な説明や指示をすること。 ・外食などの際に、本人の希望に応じて、落ち着いて待ったり食事をとったりできるよう、個室を用意して貸し出すこと。 ・診察などの際に、本人の希望に応じて、落ち着いて治療を受けられるよう家族や支援者の付添いを認めること。 ・学習内容の習得が困難な児童生徒等に対し、理解の程度に応じて、絵や図を用いるなど視覚的にわかりやすい教材を用意すること。  【ワンポイント】    普段何気なく使っている表現でも、わかりづらいことがあります。少し工夫することでわか   りやすくなります。  ・食堂で火災が発生したため、エレベーターを使わず、直ちに指定の場所へ避難してください。   → 食堂で 火事が おきました。 急いで 外の広場へ 逃げてください。 階段で   逃げてください。 エレベーターは 使えません。 (3)精神障害  精神障害とは、精神疾患等により、日常の様々な活動や社会参加をする上で困難がある状態です。脳の機能障害と考えられており、誰もがなりうる身近な障害です。 なお、発達障害、高次脳機能障害も精神障害に分類されています。  令和5(2023)年4月1日現在、栃木県において17,949人が、精神障害者保健福祉手帳を所持しています。 <主な精神疾患と特性> ○ 気分障害 気分の波が主な症状としてあらわれる病気です。  気分の落ち込みや不安などを特徴とする「うつ病」と、気分の落ち込みや気分の高揚などの特徴を繰り返す「双極性障害(躁うつ病)」などがあります。 ○ てんかん  何らかの原因で、一時的に脳が過剰に興奮することにより発作が起こる病気です。意識障害を伴わずに体の一部がけいれんする発作、嗅覚や聴覚に異常があらわれる発作、意識障害を伴う発作など、人によって様々なタイプの発作があり、その頻度も様々です。運転や高所の作業などについて、一定の配慮や制限が必要な場合もあります。 ○ 統合失調症  脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状があらわれます。また、日常生活や社会生活において、適切な会話や行動や作業ができにくいという生活の障害もあらわれることがあります。 <接するときに>  精神疾患は身近な病気で、その多くの人が、服薬や診療などの治療により症状をコントロールしながら生活しています。専門の医療機関や相談機関などを利用しながら、家族や本人、周囲の人が病気について理解することが大切です。  社会と関わりを持つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他の人との交流や仕事を続けられるように支えていきましょう。  いつもより症状が強いときには無理をさせず、しっかり休養をとることや、速やかに主治医への相談につなげることを心がけてください。  てんかんの発作が起こった場合は、本人の安全を確保し、必要に応じて家族や支援者に連絡しましょう。発作時の対応を前もって確認することなども大切です。 <合理的配慮の具体例> ・大勢の人がいることや、音が気になることなどにより、その場所で待つことが難しい場合は、順番待ちの際に、呼出器の活用や携帯電話への連絡、呼出時間を決めることなどにより、落ち着いたところで待つことができるようにすること。 ・仕事の手順を細分化したり、見てわかる工夫を取り入れたりするなど、具体的な説明や指示をすること。 ・服薬や通院のための休暇を認めること。 ・本人の希望に応じ、落ち着ける別室での休憩を認めること。 【ワンポイント】  気分障害や統合失調症では、自分の症状によるつらさを他者に分かってもらえないことの苦しさがあります。また、落ち込みや過敏さのために見かけより疲れやすくなっています。  さらに症状の波があり、食事や掃除、入浴などの日常生活を行うことや仕事などができなくなる場合があります。面倒がったり、さぼったりしているのではないことをご理解ください。 (4) 発達障害  発達障害とは、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症(ADHD)、発達性学習症(LD)など、脳機能の発達に関係する障害です。  認知や言語、運動、社会的な能力や技術の習得などに得意・不得意があります。また、一人ひとり特性が異なるため、その人に応じた接し方や合理的配慮が望まれます。  令和4年に文部科学省が行った調査(医師の診断に基づくものではなく、学級担任を含む複数の教員により判断された回答を基にした調査)において、通常学級に在籍する児童生徒の中で、発達障害の可能性のある学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合は、8.8%程度であったと報告されています。この数値を40人学級に当てはめると、1学級につき3〜4人の支援を要する児童生徒が在籍していることになります。 <主な発達障害と特性>   ○ 自閉スペクトラム症 主な特性として、以下のようなことがあります。   ・対人的な関わりや社会性の困難(他の人と関わろうとしない、また、関わり方が一       方的である、場の空気を読むことや相手の感情・考えを推しはかることが苦手など) ・気分が変わりやすい、常識がわかりづらい ・パターン化した行動やこだわりがある    感覚が敏感であったり、鈍感であったり、特定の感覚が苦手なことがあります。 また、言葉の発達の遅れがある人やない人もいます。 ○ 注意欠如多動症(ADHD) 年齢や発達に比べて以下のような特性があります。 ・不注意(集中できない、ケアレスミスが多い、忘れっぽいなど) ・多動性(座っていることができない、じっとしていられない、しゃべりすぎるなど) ・衝動性(考えるよりも先に動く、質問が終わる前に話し出す、順番を守ることが難しいなど)   ○ 発達性学習症(LD)  知的な発達に遅れはありませんが、以下の特性のように「読む」「書く」「計算する」など特定のことを学んだり、行ったりすることが苦手であり、学習面に問題が生じます。 ・文字を読み飛ばす、文末を変えて読むなど記載されているとおりに音読することができない、どこを読んでいるのかわからなくなる ・鏡文字を書いてしまうなど文字を正しく書けない、文字を正しく書き写せない、枠の中に文字を書くことができずはみ出してしまう ・簡単な暗算や筆算ができない、数字の大小がわからない <接するときに> ・人混みや音などの刺激が苦手な場合 刺激をできるだけ少なくするなどの環境を整えましょう。 ・あいまいな言葉が理解しにくい場合 具体的でわかりやすい言葉を使ったり、写真や絵などを見せたりしながら伝えましょう。 ・見通しが持てず、不安になる場合 カレンダー、スケジュール表などを活用して視覚化し、次の予定を伝えましょう。 ・パニックを起こしてしまった場合  強引な対応や不必要な言葉がけは、かえって不安を増大させます。命の危険や怪我などがないよう、周囲の危険な物を動かすなどして、落ち着くまでしばらく見守りましょう。   ・暗黙の了解がわからないなど、コミュニケーションが難しい場合  やさしく、はっきり、短い言葉で伝えましょう。また、「きちんと」「ちょっと」など抽象的な表現ではなく、「○回」「○分」など具体的な表現を用いたり、「××しない」など否定形ではなく、「○○しましょう」と肯定形で、具体的に何をすればよいかを伝えたりしましょう。 <合理的配慮の具体例> ・慣れない場所や本人のこだわりから、診察室に入れないとき、医師が外に出て診察すること。また、店などに入れないとき、外でメニュー表やサンプルを見せて、必要な商品の購入を手助けすること。 ・大勢の人がいることや、音が気になることなどにより、その場所で待つことが難しい場合は、順番待ちの際に、呼出器の活用や携帯電話への連絡、呼出時間を決めることなどにより、落ち着いたところで待つことができるようにすること。 ・学習障害のため漢字の読み書きが苦手な人に、漢字にルビをふって読みやすくすること。 ・パソコンなどの機器を学習の場で用いて、苦手な部分を補助すること。 ・抽象的な言葉の理解が難しい人に対し、わかりやすい言葉を使ったり、写真や絵カード、模型などを用いて見てわかる工夫を取り入れたりするなど、具体的なイメージが持てるように説明すること。 ・入学式等の式典に当たり、見通しが持てるよう、下見を許可したり事前にスケジュールを説明したりすること。・学校において、生活や学習のために必要なものの持ち込みを許可すること。 ・仕事の手順を細分化したり、「○時まで△△をします」と事前に伝えたり、スケジュール表を使ったりするなど、見通しが持てるようにすること。 ・本人の希望に応じ、落ち着ける別室での休憩を認めること。 【ワンポイント】 発達障害は見た目ではわかりにくく、誤解を受けやすい障害です。  能力にばらつきがあったり、感覚や認識の仕方が多くの人とは異なることがあったりしますが、脳の機能の違いによるもので、育て方や本人の努力不足によるものではありません。基本的には、周囲が本人の特性を理解し、それに応じた対応をしていくことが大切です。 (5)高次脳機能障害  高次脳機能障害とは、事故や病気などで脳に損傷を受けたことにより、注意・思考・記憶・言語・行為や感情のコントロールなどが難しい状態です。 複数の症状があらわれるのが一般的で、そのあらわれ方は大きく個人差があります。  また、外見ではわかりにくい症状もあるため、周囲の理解がないと、誤解やトラブルなどの原因になります。  後天性の障害であることから、本人も自分の障害を十分に認識できないことがあります。また、過度の緊張による脳の疲労から、短時間のうちに体調が大きく変化する場合もあります。  厚生労働省が行った「生活のしづらさなどに関する調査(平成28年度)」結果を基にして算出した推定値では、全国に約33万人いるとされており、本県の人口に換算すると約5,000人の高次脳機能障害者がいると推定されます。 <接するときに> ・気が散りやすく、うっかりミスが多い場合(注意障害) 集中しやすい環境づくりを心がけ、内容確認の声かけを行いましょう。 ・覚えられない、思い出せない場合(記憶障害)  メモやカレンダー、スケジュール表などで視覚化したり、一度に伝える情報量を少なくしたりして伝えましょう。 ・計画が立てられない、要領良くできない場合(遂行機能障害) 作業の手順を細かく分けるなど、わかりやすく、具体的に示すようにしましょう。 ・ささいなことで怒り出す、我慢ができない、やる気が出ないなど感情や行動のコントロールができない場合(社会的行動障害) 話題や場所を変える、行動のきっかけとなる原因を探し避けるようにしましょう。 ・脳が疲れ易いため、集中が続かない場合(易疲労性)    こまめに休憩をとるようにしましょう。 <合理的配慮の具体例> ・通常、口頭で行う案内や説明に加え、紙にメモを書いて渡すこと。 ・仕事の手順をわかりやすく具体的に説明すること。その手順のメモやチェックリストを作成し、目につくところに貼っておくなど、いつでも確認できるようにすること。 ・本人の希望や疲労等の状態に応じ、ゆっくり会話をする、落ち着いたところで休憩できるようにすること。 ・学校の授業等において、線を太くして見やすく提示したり、滑りにくい定規や目盛りが見やすい道具の使用を許可したりすることにより、児童生徒が取り組みやすくする工夫をすること。 【ワンポイント】  こどもの高次脳機能障害については、身体機能の回復が著しいため、高次脳機能障害が見落とされがちです。特に、集中できない、覚えられない、疲れやすいという特性に対し、学習環境への十分な配慮が必要です。  また、高次脳機能障害者には、次のような特性を持つ人もいます。事故などにつながるおそれがあり、本人に危険が及ぶ可能性があります。 ・半側空間無視  目に異常はありませんが、左右半分を認識することが難しくなります。認識できる側から話しかけたり、認識しやすい側に配置したりしましょう。 ・地誌的障害  知っているはずの道で迷ったり、地図を読むことや位置関係を説明することが難しくなったりします。出張や勤務地の変更などは避けるようにしましょう。 (6) 難病あああああああああああああああああああああああああああああああああああ  難病とは、発病の原因が明らかでなく、根本的な治療方法が十分には確立していない希少な疾病であって長期の療養を必要とするものです。  難病には様々なものがあり、また、同じ疾病であっても人によって症状は異なります。そしてその多くは、外見から病状がわかりにくくなっています。  定期的な服薬や通院、休息などが必要な場合もありますが、その人の病状に合わせた配慮があれば、多くの人が仕事や学校生活などを送ることができます。  令和5(2023)年3月31日現在、栃木県においては15,282人が、医療費助成制度の対象である指定難病の患者として認定されています。 <接するときに>  難病はそれぞれ特性が異なり、病状(障害)が進行することもあるので、その人に合わせた対応を心がけましょう。 体調がすぐれないときは、休憩できる場所を案内しましょう。 <合理的配慮の具体例> ・仕事や長時間話をするときなどは、本人の体力や体調に応じて休憩を挟むこと。 ・治療等のため学習できない期間が生じる児童生徒等に対し、補習を行うなど、学習機会を確保する方法を工夫すること。 ・服薬や通院のための休憩や休暇を認めること。 【ワンポイント】  難病には、県内においてもわずか数人しか罹患していない疾病もあれば、1,000名を越える人が罹患している疾病もあります。県内で特に患者数が多い疾病は、次のとおりです。 ・潰瘍性大腸炎  大腸の粘膜に潰瘍などができる炎症性の疾病です。主な症状としては、下痢、腹痛、発熱、食欲不振、体重減少、貧血などです。 ・パーキンソン病  ふるえ、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)を主な症状とする疾病です。50歳以上で発症する例が多く、40歳以下で発症する場合もあります。 ・全身性エリテマトーデス  発熱、全身倦怠感、易疲労感などの全身症状のほか、関節炎や皮膚の発疹、腎臓、肺、中枢神経などの内臓に様々な症状が一度に、あるいは経過とともに起こる場合があります。強い紫外線(太陽光)に当たった後に、皮膚に赤い発疹、水膨れ、あるいは熱が出るなどの日光過敏の症状が出る人もいます。   (6)重症心身障害・その他医療的ケアが必要な障害児(者)            あ ○重症心身障害  自分で身体を動かすことができない重度の肢体不自由と、年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害が重複している状態をいい、出生前から出生後、乳幼児期、発達期にかけて発症します。 重症心身障害児(者)の数は、約3,000人に1人いると推定され、本県の人口に換算すると、約  630人の重症心身障害の人がいると推定されます。    ○医療的ケアが必要な障害者  医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児(者)です。   歩ける医療的ケア児(者)から寝たきりの重症心身障害児(者)まで、様々な方がいます。   令和5(2023)年4月1日現在、栃木県には365人の医療的ケア児がいます。 <接するときに>  重症心身障害者や医療的ケア児(者)に出会ったら、家族や支援者だけではなく、本人にもあいさつや声かけをしましょう。  身体を倒した状態で使用できる大きな車椅子や人工呼吸器などを装着して専用の車椅子を使用して移動されている方は人の手を多く必要とすることがあるため、困っている様子を見かけたら、本人や支援者に声をかけて手助けしましょう。  エレベーターの大きさはどのくらいか、成人がおむつ交換できるスペースを備えた多機能トイレがあるかといった施設のバリアフリーの状況などについても、情報提供できるようにしましょう。   <合理的配慮の具体例> ・移動の妨げになる物を動かしたり、席を譲ったりすること。 ・問合せに応じ、施設や可能な配慮についての詳細を、情報提供すること。 ・食事を提供するとき、本人や支援者に確認し、きざみ食やミキサー食※等を提供すること。 ※ きざみ食とは、料理を細かくきざむことで、ミキサー食とは、料理をミキサーにかけることで、食べやすくした食事です。必要に応じて水分やとろみを加えます。 ・学校生活全般において、医療機関や支援者等と連携を図り、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、過剰に活動の制限等をしないようにすること。 ・胃ろうやたんの吸引などに必要なスペースの確保をすること。 【ワンポイント】   ○重症心身障害者は、一般的に次のような特徴があります ・ほとんど寝たままで自力では起き上がれない。 ・自力での移動や寝返りも困難で、身体を倒した状態で使用できる大きな車椅子などを利用している。 ・食物が気管に入ってしまう誤嚥を起こしやすい。食形態としては、きざみ食や流動食が多く、胃ろうの人も多い。 ・手足や脊柱の側わん、拘縮などにより変形を伴う人が多い。また、極度に筋肉が緊張し、思うように手足を動かすことができない。 ・肺炎や気管支炎を起こしやすい。痰の吸引が必要な人や人工呼吸器を付けている人もいるなど、医療的ケアが必要な人も多い。 ・言語による意思の伝達や身振りでの表現が困難であるが、表現力は弱いものの表情で応えることができる。   ○医療的ケア児等支援センター「くくるん」について 医療の進歩により、多くの幼い命が助かる一方で、障害を抱えた「医療的ケア児」と24時間 そのこどもを育児・介護している家族が暮らしています。栃木県では、医療的ケアが必要なお子さんとそのご家族が気軽に相談ができる、栃木県医療的ケア児等支援センター「くくるん」を運営しています。    「くくるん」では、医療的ケア児者や家族等からの様々な相談に対応し、関係機関と連携し ながら支援を行います。また、支援に係る情報の集約や発信を行いながら、地域における支援ネットワークの構築に取り組んでいます。     (7)多くの障害者に共通する合理的配慮                     あ 特定の障害にかかわらず、多くの障害に対応した合理的配慮と考えられる具体例があります。 ・おもいやり駐車スペースやユニバーサルトイレを適正に利用すること。また、適正な利用を呼びかけること。 ・多くの障害者の駐車場利用が見込まれるとき、入口に近い場所を、臨時の障害者用駐車場とすること。 ・集合住宅において、障害者のために通常駐車場としていないスペースの利用を認めること。 ・学校生活において、必要な支援や配慮につなげるため、学校と家庭との間で連絡帳などにより日々の情報交換を密にする工夫をすること。 ・バスや電車において、席を譲ること。 ・本人の通院や体調などの状況、公共交通機関の状況に応じて、自家用車出勤を認めたり、出退勤時刻の変更を認めたりすること。 ・火事や地震などの災害が発生したとき、家族や支援者とも協力し、安全な避難を補助したり、周囲の状況などの情報をわかるように伝えたりすること。 ・ヘルプマークを身につけた方が困っていそうなとき、配慮が必要かどうか声をかけること。 【ワンポイント】    ○栃木県ひとにやさしいまちづくり条例  障害者、高齢者、妊産婦など全ての県民が、積極的に社会参加できるよう生活環境を整備していくため、「栃木県ひとにやさしいまちづくり条例」を制定し、ソフト面・ハード面からのバリアフリー化を推進しています。  「おもいやり駐車スペース」は、この条例に基づき、肢体不自由、視覚障害や内部障害、難病などにより、外出の際に配慮が必要な人のためのスペースです。  通常の車幅のスペースも設置されていますが、特に車椅子マークのある幅広のスペースは、車椅子の出し入れができるように確保されたものであり、配慮が必要です。  必要な人が利用できるよう、適正な利用やその呼びかけにご理解・ご協力をお願いします。なお、おもいやり駐車スペースには限りがありますので、互いに譲り合うなどして、ご利用ください。  ○栃木県障害者コミュニケーション条例  障害のある人の情報取得を円滑にし、自立と社会参加を促していくため、「栃木県障害者コミュニケーション条例」を制定し、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用を推進しています。  この条例に基づく取り組みの一つとして、災害時等において、障害のある人が必要な情報を取得し、避難所等において他人との意思疎通を円滑に行うことができるよう、日ごろの備えや避難所での注意点、障害特性に応じた対応等をまとめた災害対応マニュアルを作成しました。  合理的配慮の提供の参考としてください。            5 様々な分野における合理的配慮の具体例    ここでは、各府省庁が作成する対応指針や内閣府が運営する「障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト」に掲載されている具体例を参考とした他、県内の障害者団体等の皆様に御協力いただき、各分野における合理的配慮の具体例をまとめました。  「4 障害ごとの特性と合理的配慮の具体例」を踏まえ、各分野においてどのようなバリア(困りごと)あるか、また、どのように配慮したらバリアを取り除けるか確認しましょう。  ご自身の職場にあるバリアや配慮について考えていただくきっかけとなれば幸いです。  具体例を参考に、よりよいサービスを目指していきましょう。  なお、以下の点に注意してください。 ・全ての分野を網羅しているわけではないこと。 ・障害の種類は多様で程度も様々であり、個々の場面ごとに必要な配慮は異なるため、「建設的対話」を通じて、一人ひとり柔軟に対応することが重要であること。 ・記載している具体例以外にも、個々の場面によって適切と考えられる合理的配慮があること。   (1) 医療、福祉サービス ■肢体不自由のある方(医療、福祉サービス)  困りごと 配慮の具体例 受付や窓口のカウンターが高く、車いすに乗ったまま用紙に記入したり、支払いをしたりすることに不便を感じる。 ・受付の係員が、カウンターの外に出て対応した。 ・記入用のボードや、釣り銭トレイを渡した。 ・低いカウンターや机を設置した。 待合室が狭く、車いすに乗っていたり、補助犬を連れていたりする場合に待機するスペースがない。 ・車いす利用者用のスペースを用意した。 ・極力、患者が少ない時間帯で予約を取った。 ・外や自宅で待つ場合、電話や声をかけて知らせた。 病院の入口に段差や急な坂道があり、介助者がいない場合は一人で入りづらい。 ・入口付近にボランティアを配置し、サポートした。 ・事前に電話で連絡をもらえれば、入口に係員を待機させるようにした。 ・可動式の折りたたみスロープを用意した。 介助用車椅子を使用した施設職員等の介助による移動ではなく、施設の電動車椅子による自立移動がしたい。 ・担当職員による実地確認や電動車椅子の使い方の指導をし、安全な移動が可能であることが確認されたため、電動車椅子の使用を許可した。 退院後に利用する障害福祉サービス事業所の内見をしたいが、入院中のためできない。 ・病院と事業所が協力し、施設内の写真を電子メールで送り、施設の状況を知らせた。 ■視覚障害のある方(医療、福祉サービス) 困りごと 配慮の具体例 パンフレットや書類を読むことができず、内容がわからない。問診票の記入や、受付機の操作をすることができない。 ・パンフレットや書類の内容を読み上げた。 ・受付機のそばに事務職員がいて、代わりに操作した。 ・事務職員が代わりに問診票を記入した。 入口や受付の場所がわかりづらく、一人で来院することに不安がある。待合室に空いている席があっても、気づくことができない。 ・入口から受付まで、事務職員やボランティアが誘導した。 ・待合室の席が空いたら、事務職員が声をかけて教えた。 ・診察室まで、手を引いて案内した。 レントゲン、検査の結果や処方箋に、写真や図が使われている場合、見せられても内容がわからない。 ・口頭でわかりやすく説明した。 ・自宅で家族に見てもらいやすいように、写しを提供した。 地域の福祉センターを訪問する際、案内看板等 が見えず単独で行くことができない。 ・センター入口付近にガイドボランティアを配置し、手助けが必要な人に一声かけるようにした。 ■聴覚障害、言語障害のある方(医療、福祉サービス) 困りごと 配慮の具体例 口の動きで大まかな会話は読み取ることができるが、医師や看護師がマスクをつけたまま話すと、読み取ることができない。 ・医師と看護師がマスクを外して話すようにした。 ・筆談やPCモニターを交えながら、説明した。 ・口の動きを読み取りやすいように、ゆっくり話した。 自分の名前や順番が呼ばれたことに気づかず、周囲に聴覚障害があることもわかってもらえない。 ・診察ファイルの色で、障害があることを識別するようにした。 ・順番がきたら、事務職員や看護師が患者に声をかけるようにした。 聞こえづらい又は話しづらいため、電話で診察の予約や問い合わせをすることができない。 ・インターネット(ホームページやメール)から問い合わせや診察の予約ができるようにした。 ・ファックスで問い合わせや相談ができるようにした。 ■知的障害・発達障害のある方(医療、福祉サービス) 困りごと 配慮の具体例 複雑な説明や、専門用語がわかりづらく、診察や検査の内容に不安を感じる。 ・わかりやすい言葉やイラストを使って説明した。 ・検査の内容を、事前に図や写真を使って詳しく説明した。 ・理解したことを確認して、次の説明をするようにした。 慣れない外出や、人が多い場所では不安になっ て声を上げたり、歩き回ったりすることがあ り、周囲の目が気になる。 ・極力、患者が少ない時間帯で予約を取った。 ・パーテーションで区切って、苦手な刺激を抑えた。 ・空いたスペースを用意した。 ・駐車場の車内で待機できるようにした。 ・診察台に座ることに慣れるところから始め、次に、本人に分かるように説明をしながら、少しずつ治療を進めた。また、怖がらないよう優しく声をかけた。 検査で次の場所の案内を受けても、進路がわかりづらく、不安になる。 ・診療科からレントゲン検査、血液検査に行くまでの動線を床面に示した。 施設利用者全体に向けた説明の場合、理解できないことがしばしばある。 ・全体での説明の他に個別に時間を取り、文字やイラストにして直接伝えるようにした。 入所施設やグループホームを利用する際、慣れるまでに時間がかかる。 ・本人の気持ちに折り合いが付くよう、利用頻度の調整や本人の気持ちに寄り添った対応を行った。 ■精神障害のある方(医療、福祉サービス) 困りごと 配慮の具体例 人が多い場所ではパニックを起こしやすく、待合室で長時間待機することがつらい。 ・極力、患者が少ない時間帯で予約を取った。 ・パーテーションで区切って、スペースを作った。 ・空いているスペースで、待機してもらった。 他人と話すことに恐怖感や警戒心があり、医師や看護師に自分の思いや身体の状態を上手く伝えることができない。  ・医師が時間をかけて、しっかりと話を聞き、患者と丁寧に向き合った。 ・診察中に聞きそびれたことへの問い合わせにも丁寧に対応した。 慣れない外出をしていると疲れやすく、院内の移動や長時間待機することがつらい。 ・こまめに声をかけ、体調を把握した。 ・受付から様子を見守りやすい座席に案内した。 福祉サービス事業所でピアサポーターとして活動しているが、たまに幻聴が出現することがあり、活動に支障が出ることが心配。 ・幻聴が出た際は、普段通り服薬し安静にしてよいこと、症状が出ても気にする必要がないことを伝えるなど、本人に寄り添った対応をした。 (2) 教育 ■肢体不自由のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 歩行に困難があり、長距離の移動は疲れやすいため、学校内の教室移動について配慮してほしい。 ・教室がある建物の玄関付近にフラットなベンチチェアを複数設置し、休憩してから教室へ移動することができるようにした。 試験中にトイレへ行けるようにしてほしい。また、トイレは多機能トイレを希望する。 ・試験会場を多機能トイレの近くにある部屋にするとともに、座席についても部屋の出入口の近くを割り当てた。 上肢や手指の動作に不自由さがあり、小さな文字を書くことに困難があるため、学校のテストを受ける際に大きな解答用紙を使えるようにするとともに、時間を延長してほしい。 ・解答用紙を拡大し、時間延長も可能とした。 筋緊張が強く上肢や手指の動作に不自由さがあり、筆記に困難があるため、小テストや期末テストで配慮してほしい。 ・小テストについてはPC上での解答及びUSBメモリによる提出とし、期末試験については授業担当者が選定した代筆者で対応することにした。 ロッカーの利用について、車椅子に乗った状態で使える高さの場所に指定してほしい。 ・使いやすい高さを本人と確認の上、ロッカーの場所を指定した。   ■内部障害、難病のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 定期的な通院が必要であることから、授業や試験を欠席することが多くなってしまう。 ・担当教員の間で授業や試験における配慮について情報共有を行い、欠席が多くなる場合には、レポート提出などの代替手段を設けることとした。 難病に起因する障害があり、体調が不安定なた め、なかなか授業に出席できない。 ・同時双方向型授業配信の実施やオンデマンド型の授業を活用してもらった。また、欠席時の代替評価として、課題の事後提出や追試の実施なども行った。 試験中に薬と水を机上に置くことと、試験中に服薬することを認めてほしい ・試験監督者が事前に確認を行った上で、机上に置いて試験中に服薬することを認めた。 難病に起因する虚弱体質のため呼吸が苦しくなることがある。このため、携帯型の酸素吸入器を学校に持参したい。 ・持参した酸素吸入器を保健室に置いて必要なときに使用することとし、また校外での活動の際は養護教諭が携行・管理した。 ペースメーカーを使用しているため、実験機器によっては参加できない。 ・参加できない実験について、別室でオンラインによる視聴を行うことができるようにしたり、実験の流れや結果等が分かる動画や資料を提供したりした。 ■視覚障害のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 入学当初は特に、教室、階段、トイレの位置などが分からず、学校内の移動が不安になる。 ・入学の際に学校内の歩行指導を行った。 復習するときに使いたいので、授業を録音させ てほしい。 ・授業の録音は禁止されているが、障害の状況等を踏まえ、録音機器の使用を認めることとした。 色覚障害のため、黒板に書かれている重要な箇 所について、赤色のチョークで強調されると、分からなくなってしまう。 ・強調したい箇所があるときは、他の見やすい色のチョークを用いたり、カラーチョークではなく波線によって強調したりするなど、黒板の書き方を工夫した。 弱視のため、通常のテスト問題用紙では印刷さ れた文字が小さくて、読むことができない。 ・生徒の見やすいフォントを確認し、ポイントを上げてテスト 問題用紙を作成した。また、弱視レンズや拡大読書器などの視覚補助具を使用できることとした。 弱視のため、授業で使用する資料や授業中の黒 板などの文字が小さくて、読むことが難しい。 ・授業で使用する資料のデータを提供して自身のタブレットPCで拡大できるようにした。また、授業中に黒板や紙媒体の資料を拡大するため、弱視レンズなどの視覚補助具の活用やタブレット型端末で写真撮影を許可した。 ■聴覚障害、言語障害のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 難聴がある影響で、授業を聞くこととノートを書くことの両立が難しいときがある。 ・授業の撮影は禁止されているが、障害の状況等を踏まえ黒板の撮影を認めることとした。 出席点呼を聞き取れないが、他の生徒と同じよ うに返事をしたい。 ・出席点呼をするときには、口頭だけではなく身振り・指文字・手話などを加えて、その生徒に自分の順番となったことが伝わるようにした。 聴覚障害により聞き取りに困難があることか ら、音声のやり取りが必要なリスニング等の試 験を受験することができない。 ・リスニング等の音声のやり取りが必要な試験は、代替の課題を設けて点数を補えるようにした。 聴覚障害があるが、学校で友人達とコミュニケ ーションをとりたい。 ・本人の了承を得て、教員が他の生徒等に対して、本人とのコミュニケーションの際は、ホワイトボードに書く、実物や絵カード、図など視覚的な手がかりを用いる、話すときにゆっくり、はっきりと口元が見えるような話し方で伝えるといった方法を説明し、そのことにより簡単なコミュニケーションがとれるようになった。 講義の内容が雑音で聞き取りにくいときがある ので、座席を配慮してほしい。 ・教員の口元が見え、本人の聞き取りやすい位置に座席を変更した。 ■盲ろうのある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 入試(面接、小論文)の際に、通訳・介助者の派遣制度を利用したい。 ・面接では、事前に面接方法や会場レイアウトなどについて打合せを行ってから実施した。小論文では、通訳・介助者が同席したほか、時間延長やパソコン使用許可などの配慮を行った。 学校の授業を受けるときに、弱視難聴のため黒 板が見えづらく、声も聞こえづらい。 ・黒板が見えやすく、音声が聞き取りやすい位置に座れるよう座席を確保した。 ■知的障害のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 学習活動の内容や流れを理解することが難し く、何をやるのか、いつ 終わるのかが明確に 示されていないと、不安定になってしまい、学 習活動への参加が難しくなる。 ・本人の理解度に合わせて、実物や写真、シンボルや絵などで活動予定を示した。 学校からの連絡プリントに記載されたカタカナ や漢字の読みが難しいため、内容を理解するこ とが困難である。  ・プリントのカタカナや漢字に平仮名でルビを振 り、読み取りが可能なよう対応した。 言葉だけでの指示だと、内容を十分に理解でき ず混乱してしまうことがある。 ・身振り手振りやコミュニケーションボードなどの視覚的な支援も用いて内容を伝えるようにした。 多くの人が集まる場が苦手で、集会活動や儀式 的行事に参加することが難しい。 ・集団から少し離れた場所で本人に負担がないような場所に席を用意した。また、聴覚に過敏がある場合、イヤーマフなどを用いることとした。 卒業式での証書授与の際に、どこで立ち止ま り、どこを歩くのかを理解するのが難しい。 ・会場の床に足形やテープなどで動線と目的の場所を示すことで、どこを歩くのかを理解しやすいようにした。    ■精神障害のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 授業中に情緒不安定になってしまうことがある。 ・情緒不安定になったときには、落ち着くまで一人になれる場所へ移動して休むことができるようにした。 精神障害があるため、教室で授業を受けること が難しい。 ・別室や保健室への登校を認めることにした。 緊張が著しいので、授業のグループワークで口 頭による発表や応答が難しい。 ・発表する内容を事前に周知し、代読による発表や筆談による応答を許可した。 授業で他者とコミュニケーションを取るときや 難しい課題に取り組むとき、緊張やパニックが 起こることがある。 ・緊張したり気分が悪くなったりしたときは、教室から一時的に退室することを認め、クールダウンさせることにした。 「てんかん」があるが、親の付き添い無しで、 クラスのみんなと一緒に修学旅行に参加し、現 地でも一緒に行動したい。 ・保護者に、「てんかん」にかかる注意点(服薬のタイミング、入浴方法、てんかん発作時の対応方法等)を確認し、それを踏まえ教員間で対応方法を検討し、できるだけ他の生徒と一緒に参加できるよう計画した。    ■発達障害のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 文字の読み書きに時間がかかるため、授業中に 黒板を最後まで書き写すことができない。 ・書き写す代わりに、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット型端末などで、黒板の写真を撮影できることとした。 読み書きに困難さがあるため試験問題を読み、 回答を書くまでに時間がかかる。また、あいま いな指示や複数の指示を口頭で受けると理解し づらいため、困っている。 ・試験に当たって、時間の延長や別室で受験がで きるよう配慮した。指示をする時は短く簡潔に し、視覚情報で具体的に伝える等の支援を教職員 で共有しながら行った。 学習障害があるため、授業でタブレット端末を 使用できるようにしてほしい。 ・管理場所や使用方法等を決め、タブレット端末を使用できることとした。 文字を認識することに困難があるため、テキス トに記載されている文章を読むことができな い。 ・認識しやすいフォントを使うようにするとともに、必要に応じて読み上げたり、配付資料をテキストデータ化し音声読み上げが可能となるようにした。 教員の話を聞いて想像することが苦手なため、 内容を理解することができない。 ・絵、写真、図、実物などを見せることで、授業内容や活動予定を理解しやすいように配慮した。 周囲の物音に敏感なため気が散ってしまい、集 中して学習に取り組むことができない。 ・教室内での耳栓使用や、別室への移動により、静かな環境で課題に取り組めるようにした。 先を見通すことが苦手なため、初めての活動に 対して不安になり、参加できない。 ・活動を始める前に、これから活動する内容や手順について説明して確認する。また、学習活動の流れを表にして机上に示し、次の活動をいつでも確認できるようにすることで安心して取り組めるよう配慮した。 授業中に座っていられなくなり、教室内を動き 回るなど落ち着いて授業を受けることが困難。 ・周囲の人や物が気にならない座席(前方)にする、注意が他のものに移っているときにはそばに行き、さりげなく声かけをする、教科書の見るべきところを指差しして注意を向けるなどの働きかけをした。 大学生活を送れるか不安がある。 ・大学入学前の面談の際、支援担当教員が今までの検査結果を見せてもらい、苦手なところを理解するとともに、大学生活で起こりそうな困難なことと対処方法を説明した。 ■重症心身障害のある方(教育) 困りごと 配慮の具体例 学校では仰向け姿勢や後傾椅子座位でいること が多いので、天井灯の光が視野に入り、眩しさ から目を閉じてしまう。 ・天井灯の手前に白い布などを広げて吊るし、光が直接目に射しこまないようにした。 夏休み期間中に開催する体験学習会に参加した い。重症心身障害のある児童や医療的ケアが必 要な児童とその家族が参加しやすいようにして ほしい。 ・バリアフリーの会場に、医療的ケアを行うためのスペースと医療機器の電源が取れる延長ケーブルを準備した。 (3) 公共施設・公共交通機関 ■肢体不自由のある方(公共施設・公共交通機関) 困りごと 配慮の具体例 駅で車両とホームの隙間に車椅子の前輪がはまりそうで怖い。ホームの幅が狭い上に点字ブロックがあり、車椅子で方向転換ができない。 ・職員が乗降の介助を行った。 座席に座れず立っている場合、つらい思いをす る。 ・体が不自由な方には席を譲るよう掲示やアナウンスをするようにした。 車椅子用駐車スペースに一般の車が駐車してあ り駐車できない。 ・車いす使用者が優先である旨を表示した。また、係員が巡回し、一般の車が駐車した場合は声をかけるようにした。 車椅子を使用しているため、スムーズに電車や バスの乗降ができるか不安がある。 ・事前に行先と時間を伝えてもらい、駅員が乗降時にホームで駅員が待機し、スムーズに乗降できるようにした。 ・乗車希望時間にスロープ付きバスでない場合は、事前に乗車する日時・停留所を連絡いただき、ノンステップバスで運行できるよう手配した。   ■内部障害、難病のある方(公共施設・公共交通機関) 困りごと 配慮の具体例 内部障害は外見からは分かりにくいため、優先席に座っていると注意を受けることがある。 ・内部障害者も含め、体の不自由な方が優先席を使えるよう掲示・アナウンスした。 携帯電話を混雑した場所で使用されると医療機 器に影響を及ぼすことがある。 ・混雑の激しい場所では携帯電話の電源を切るようにアナウンスした。 ■視覚障害のある方(公共施設・公共交通機関) 困りごと 配慮の具体例 尋ねたいことがあっても駅員の居場所が分からなくて困る。 ・困っている様子であれば声をかけ、支援が必要か否かを確認し、求められた援助をする。 乗車券をクレジットカードで購入しようとする と署名を求められるが、視覚障害があり文字を 書くことができない。 ・本人に承諾の上、署名の代筆についてクレジットカードの関係機関に確認するとともに、複数の職員で対応した。 ■知的障害、精神障害、発達障害のある方(公共施設・公共交通機関) 困りごと 配慮の具体例 パニックになることがあるため、必ず介助者の隣に座りたい。 ・ほぼ満席になっており隣り合った空席がなかったが、他の乗客の御了解を得て座席を変更し、隣り合って座れるよう調整した。 故障や事故で急に乗り換えが必要になり、どうしていいか分からず情緒不安定な状況になり、泣いたり怒ったりすることがある。 ・やさしい言葉で声をかけ、意思を確認し援助する。 ・強引な対応が情緒不安やパニックを招くことがあるので、ゆとりを持っておだやかに話しかけ、一度下車してもらう。 ・コミュニケーションが取れない場合、身につけている持ち物などから保護者等へ連絡する。 (4) 不動産取引 ■肢体不自由のある方(不動産取引) 困りごと 配慮の具体例 物件を見る際、段差移動や長時間の移動に困難がある。 ・段差移動のための携帯スロープを用意した。 ・車椅子を押して案内をした。 ・事務所と物件の間を車で送迎した 手に麻痺があり、契約書に自筆できない。 ・自筆が困難な障害者からの要望を受けて、本人の意思確認を適切に実施した上で、代筆対応した。 車椅子使用者が住めるバリアフリーの賃貸物件 を探してほしい。 ・障害のある方が不便と感じている部分に対応している物件を確認した。 ・物件のバリアフリー対応状況が分かるよう、写真を提供した。 車椅子の使用に適した住宅を購入したい。 ・住宅購入者の費用負担で間取りや引き戸の工夫、手すりの設置、バス・トイレの間口や広さ変更、車椅子用洗面台への交換等を行うにあたって、必要な調整を行った。 ■視覚障害のある方(不動産取引) 困りごと 配慮の具体例 賃貸物件から最寄り駅までの道のりを、実際に確認したい。 ・最寄り駅から物件までの道のりを一緒に歩いて確認した。 各物件の各部屋の様子を確認したい。 ・1軒ずつ中の様子を手を添えて丁寧に案内した。 契約書の内容を読み上げてほしい。 ・理解しやすいようゆっくり、はっきりと読み上げ対応した。 ■聴覚障害、言語障害のある方(不動産取引) 困りごと 配慮の具体例 物件案内や契約内容説明の際、筆談等で対応してほしい。 ・筆談や、聴覚障害者向けのアプリケーションを使用して説明した。 ■知的障害のある方(不動産取引) 困りごと 配慮の具体例 契約内容を分かりやすく教えてほしい。 ・契約内容の簡易な要約メモを作成したり、家賃以外の費用が存在することを分かりやすく提示したりするなど、契約書等に加えて、相手に合わせた書面等を用いて説明した。   (5) 商品の販売やサービスの利用 ■肢体不自由のある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 車椅子を使用しているため、段差にスロープを渡してほしい。 ・スロープがなかったため、ダンボールを束ねてスロープ代わりにした。 商業施設の2階にある店舗へ行きたいが、エレベーターが故障しており上がることができない。 ・裏口にある従業員用のエレベーターを使って2階まで上がってもらった。   店舗の出入口が押し引きして開けるタイプのド アのため、一人で出入りするのが難しい。 ・出入口に着いたところで電話をかけてもらい、店員がドアの開閉を行った。 飲食店へ行ったときに、まだ空きはあったが、 車椅子のまま利用できる入口付近のテーブル は、すでに他のお客が使用していた。 ・入口付近のテーブルを使用していたお客に了解を得た上で、車椅子のお客も利用できるよう配席を変更した。 飲食店で車椅子から備付けの椅子に移動して着 席したい。 ・移るときにふらつくことのないよう椅子を押さえたり、車椅子を空きスペースで預かったりした。 ホテルの大浴場を利用したいが、広いスペース と介助、複数枚のタオルが必要になるので気 が引けてしまう。 ・事前に相談があったので、当日は通常よりも早く大浴場の準備を整え、本来の開放時間までの間に占有して入浴できるようにした。また、タオルも複数枚を準備しておいた。 体温調節機能の障害により、テーマパークなど で炎天下に長時間並ぶことが困難だ。 ・スタッフが順番について把握しておき、順番となるまでは室内で待機できるようにした。 定期預金を解約したいが、入院中で銀行に行け ない。また、手が不自由なため自筆ができない。 ・銀行の者が病院に行き、本人の意思を確認して家族が代筆し、定期預金解約の処理を完了した。 ■内部障害、難病のある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 立った姿勢を保つのが難しいので、座ったまま手続をしたい。 ・窓口の職員が待合室の座席に行き、手続を行うこととした。 保険の申込みをしたいが、難病に起因する障害 があり、手が硬直してしまうことから、申込書 に自署ができない。 ・家族が同席し、代理で記入した 銀行のカード発行手続を行いたいが、化学物質 過敏症により郵便物を開くことができないた め、郵送での申込手続が難しい ・webにて申込手続を行った。   ■視覚障害のある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 列に並んで順番待ちをする場合に、並ぶべき列の終端や徐々に進んでいくタイミングが分からない。 ・店員が順番について把握しておき、順番となるまで列とは別のところで待機できるようにした。 盲導犬を連れたお客が来店したところ、他のお 客から犬アレルギーだという申出があった。 ・双方に御了解いただいた上で、お互いが離れた位置になるよう配席を変更した 盲導犬と温泉施設へ来たが、入浴している間に 盲導犬を待機させる場所があるか不安。 ・入浴している間、盲導犬を待機させる場所として、事務所の一画を提供した。 弱視のため商品をタブレットで撮影・拡大して 確認したいのだが、店内での撮影が禁止されて いる。 ・撮影を認めることとした。 自分の好みに合う衣料品を購入したい。 ・衣料品の形状や色について口頭で説明し、布地に触れて肌触りを確かめてもらった。 銀行のATMや食堂の券売機などを使用したい ときに、タッチパネル式になっていると操作で きない。 ・(ATMについては暗証番号を聞くことについて御了解いただいた上で)店員がATMや券売機などのタッチパネル操作を代行した。 トイレの場所と中を案内してほしいが、異性の 店員には案内してほしくない。 ・同性の店員が案内することとした。 定食など複数の食器に分かれて盛り付けられて いる料理では、どこに何があるのか分かりにく い。 ・店員が配膳するときに、食器の位置や料理内容について説明する配慮を行った。 インターネットの通信販売で商品を注文したと ころ、PDF形式の確認書類が電子メール送付 されてきたが、その記載内容が画像として情報 認識されており、読み上げソフトを使用するこ とができない。 ・テキスト情報が残るように、パソコン上で形式変換したものを送付した。   ■聴覚障害、言語障害のある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 食券制の飲食店で、呼ばれたらカウンターまで自分で取りに行く仕組みになっているが、呼ばれても分からない。 ・店員が座席まで配膳した。 飲食店ではメニュー表への指差しで注文してい るが、細かい希望を伝えることが難しい。 ・筆談ボードを使い、細かい注文にも対応できるようにした。 イベント開催時に手話通訳者が配置されていた が、会場が薄暗くて手話がよく見えない。 ・スポットライトを調整し、手話通訳者の立ち位置が明るくなるようにした。 会員登録の内容を変更したいのだが、受付が電 話のみのため手続を行うことができない。 ・受付用ではないが他の業務で使っているFAXがあったので、そちらに新しい登録事項を連絡してもらい変更手続をした。 保険の加入手続をしたいが、聴覚障害があるた め口頭での説明を聞くことができない。 ・代理店の担当者が、筆談を交えながら保険内容の説明を行った。     ■盲ろうのある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 飲食店に入ったが、混雑状況や空席状況が分からない。店員が声をかけてくれても聞き取れないことがあり困ってしまう。 ・店員がそばまで行き、手のひらに「○」(空席がある)」か「×」(空席がない)かを指で書いてお知らせした。また、空席がある場合には、 店員がそこまで案内した。 受付窓口などで、名前を呼ばれたり、番号を電 光掲示板に表示されたりしても分からない。 ・そばまで行って直接合図して受付窓口へ誘導した。 難聴のため筆談をお願いしたが、弱視でもある ので細いペンや小さな文字では読み取りづらい ・太いペンで大きな文字を書いて筆談を行った。 聴覚障害者向けのイベントに参加したところ手 話通訳者が配置されていたが、弱視でもあるの で手話が読み取りづらい。 ・手話通訳者の直近の位置に配席した。 聴覚障害者向けのイベントに参加したところ舞 台上のスクリーンに要約筆記が表示されていた が、弱視でもあるのでスクリーン上の文字を読 み取りづらい。 ・本人が所持していたパソコンと要約筆記者のパソコンをつなぎ、手元のモニターにも要約筆記が表示されるようにした。 一人でもスポーツジムを利用できるように施設 内を案内誘導してほしい。 ・一人で利用する際には、スタッフが手のひらに書くことでコミュニケーションをとりながら、スポーツジム内を案内誘導するようにした。   ■知的障害、発達障害のある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 契約時の要望などを自分で説明することが難しいため、同行する介助者から話を聞いてほしい。 ・個人情報にも関わることなので通常は本人から聞くことになっているが、必要に応じて介助者から説明を聞くこととした。 こどもが買物の会計時に待つことができず、動 き回ったり騒いだりしてしまう。 ・会計場所に椅子を持って行き、「ここに座って待っていようか」とやさしく声をかけ、親の会計が終わるまで話し相手となった。  いつも同じ場所に椅子を置くようにしたところ、その後は会計が終わるまで1人で椅子に座って待っていられるようになった。 レジでの会計の際に持ち金が不足しており買い たいものが買えないときは、不満が折り合える まで会計を待ってほしい ・順番を待っている他のお客から「早くしてくれ」と催促があったため、事情を説明した上で他のお客は別のレジで対応した。 手続きの際、書類の記入欄を間違えたり、誤字 を書いてしまったりして、何回も書き直さなけ ればならないときがある。 ・「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼ったりして示す」「書類のモデルを作成して示す」「職員が鉛筆で下書きする」などの配慮をした。 イベントにおいて、静かに休憩できる場所がほ しい。 ・会場内に来場者用休憩室(仕切りがあり静かに休憩ができるよう配慮)を準備し、聴覚過敏、その他の困難さを抱える方や乳児等を連れた方なども安心して参加できるように配慮した。 ■精神障害のある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 異性とのコミュニケーションに負担を感じてしまうことから、同性に接客対応してほしい。 ・同性の店員がいる場合には、その者が接客対応するようにした。   ■重症心身障害のある方(商品の販売やサービスの利用) 困りごと 配慮の具体例 嚥下障害があるため、外食時に通常メニューの食事ができないが、できるだけ家族で同じメニューの食事をしたい。 ・予約の際に希望の食形態を聞き取り、それに合わせて可能な限り再調理対応し、なるべく元のメニューに近い食形態で提供した。また、専 用のスプーンや食器を持参されたので、洗ってお返しした。 食事をする部屋がテーブル席だったため、寝かせる姿勢をとることができなかった。 ・和室タイプの部屋もあり空いていたので、そちらに変更した。 車椅子がリクライニングタイプのため、スーパーの会計時にレジに並ぶこともレジ横を通ることも難しい。 ・レジにおいて、会計の順番が来るまで店員が買物カゴを預かり、順番になったときに声をかけるようにし、それまでは広いところで待てる よう配慮した。 デパートの多目的トイレには、成人用のおむつ交換用ベッドがないので不便。 ・救護室のベッドを利用していただいた。 プール施設を利用したいが、着替え用のスペース(ベッド)がないため利用できない。   ・着替えるときのプライバシーを保護できるように、人目につかず横になって着替えられるスペースへ案内したり、周囲をつい立てで囲った簡易ベッドを用意したりした。     (6) 労働 ■肢体不自由のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 車椅子を使用しているため、利用がしやすいような場所で面接を行ってほしい。 ・通常は2階で行う面接を1階で実施する、面接会場の机等の配置により車椅子での移動スペースを確保するなどにより移動の負担を軽減した。 ・WEB面接を実施した。 職場の通路に物などが置いてあると、移動に支障がある。 ・人の動線上や席周辺、通路、トイレ等に、不必要な物を置かないようにした。 印刷物や書類を取りに行く、トイレに行くなど の際、できるだけ移動を少なくしたい。 ・移動が少なくてすむように必要な設備(書類棚、各種ラック、プリンター等)を近くに配置した。 ・入口近くのトイレに行きやすい席に配置した。 ■内部障害、難病のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 体力が低下しているため、面接時間を短くしてほしい。 また、体力的に残業は困難。 ・身体的な負担等を考慮し、面接時間を短く設定した。また、面接前に本人の体調を確認した。 ・体調面を考慮して残業の少ない部署に配属した。 体調に応じて休憩をこまめに取りたい、 ・疲れを感じたときは、本人の申告により休憩を取ることを許可している。 ・横になれる休憩スペースを確保している。 定期的に通院できるよう、柔軟な勤務形態にしてほしい。 ・通院の日はフレックスタイムとし、適時に通院が可能とした。 難病により発話に難がある。 ・時間をかけて本人が話す内容を聞き取るようにした。 難病により体温調整が難しい。 ・ヒーターなどを近くに置き、調整できるようにした。 ■視覚障害のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 採用試験時に文字の拡大等の配慮をしてほしい。 ・文字の拡大、音声ソフトの利用、点字を活用した採用試験を実施した。 職場内でのレイアウトや危険箇所を把握したい。 ・採用時に、社内のレイアウト、危険箇所について説明を行った。 ・段差や危険箇所に本人の視認しやすい色のテープを貼る、大きな張り紙をするなどにより、わかりやすくした。 職場の通路に物などが置いてあると、移動に支障がある。 ・人の動線上や席周辺、通路、トイレ等に、不必要な物を置かないようにした。 職場内で紙回覧されている文書内容が分からない。 ・回覧文書等を、周りの社員が読み上げて説明した。 ■聴覚障害、言語障害のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 面接時に、筆談等の配慮をしてほしい。 また、手話通訳者の同席を認めてほしい。 ・筆談(紙、筆談パッド、ホワイトボード等)により面接を行った。 ・手話通訳者の同席を認めた。 業務指示、連絡等に際して、メモなどがほしい。 ・メールやメモで伝えるようにした。 ・聴覚障害者向けのアプリケーションを使用して、やりとりを行うようにした。 会議の際、手話通訳者の同席を認めてほしい。 ・手話通訳者の同席を認めた。 ■知的障害のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 言葉を理解し気持ちを表現することなどが苦手なため、面接時に配慮してほしい。 また、面接時の受け答えのフォローのため、就労支援機関の職員等の同席を認めてほしい。 ・本人が理解できるよう、平易な質問、優しい口調を心がけた。 ・就労支援機関の職員等の同席を認めた。 業務開始後、すぐに様々な業務に対処することが困難。 ・当初は業務量を少なくし、本人の習熟度等を確認しながら徐々に増やしていくようにした。 聞いただけでは業務内容を理解することができない。 ・作業手順や使用する器具、就業場所等について、図や写真等を活用して細かく説明した業務マニュアルを作成した。 一度に複数の指示をされると分からなくなる。 ・一つの指示を出し、終わったことを確認してから次の指示を出すようにした。 ■精神障害のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 面接時に、過度に緊張しパニックが起こることがある。 ・過度に緊張している場合などは面接を中断し、時間を空けて本人が落ち着いてから面接を再開するようにした。 業務の優先順位に迷うことがあるため、指示をしてほしい。 ・ホワイトボード等により個人別にその日や週ごとの作業を掲示するようにした。 常に緊張感を持ち続けて頑張りすぎてしまうため、リラックスできる場所で休憩したい。 ・本人がリラックスできる自由な場所(車の中、外出等)での休憩を認めた。 ■発達障害のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 コミュニケーションが苦手なため、面接時にうまく説明できないことがある。 また、言葉だけでは理解できないことがある。 ・本人が言葉に詰まった場合、平易な表現の質問に変えたり、紙媒体での質問にする等の配慮を行った。 ・言葉だけでのやりとりではなく、図や文字を用いた面接を行った。 曖昧な指示だと理解できない。 ・「午前中はこの仕事を行ってください」、「終わらなくても、午後はこの仕事をしてください」と時間を区切って指示する、「Aが終了したら、次はBです」と業務の完結をもって区切る、「きれいになったら次のものを洗う」ではなく、「10回洗ったら次のものを洗う」など、具体的に作業方法を指示するようにした。 感覚過敏(音や光、嗅覚などが過剰に敏感な症状)があるため、集中できないことがある。 ・耳栓やヘッドフォン、サングラスの着用を認めた。また、においに対しては、芳香剤の使用を認めた。 ■高次脳機能障害のある方(労働) 困りごと 配慮の具体例 記憶障害があるため、面接時にメモをとらせてほしい。 ・メモをとることを認めた。 ・ゆっくり簡潔に質問するようにした。 新しいことを覚えることや、同時に複数の作業をこなすことが難しい。 ・業務を教える際は、本人がメモをとりやすいスピードで話すようにした。 ・写真や図を多用して作業手順を示した。 ・作業の終了報告後に次の作業を出すようにするなど、指示は一つずつ行うようにした。 計画立てて要領良く業務を行うことができない。 ・1日の業務を、本人のペースに合わせたタイムスケジュールにして提示した。 脳が疲れやすいため、集中が続かない。 ・体調に合わせ、勤務時間・休憩時間・残業を柔軟に調整した。 (7) 行政 ■肢体不自由のある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 申請書類の受付窓口が庁舎の2階にあるが、エレベーターがないため上がることができない。 ・使用していない会議室など1階の適宜の場所まで担当職員が移動し、 臨時に受付を実施することで対応した。 手続の受付時間が指定されていたが、朝一の時間になっており、通勤で混雑する時間帯と重なっていることから移動の負担が大きい。 ・受付時間の調整を行った。   説明会に参加するときに出入りしやすいように 後方の席を用意してほしい。 ・出入りと移動のしやすさを考慮して後方に席を用意した。 会議の会場に近い駐車場を利用したい。 ・会場近くの駐車場を確保した。 車椅子のまま申請手続きしたい。 ・窓口に置いてある椅子を撤去し、車椅子のまま申請手続きができるようにした。 手に麻痺があるため、申請内容を代筆してほし い。 ・本人に同意を取り代筆した。 複数の課にまたがる手続きの場合、移動が大変。 ・他の関係課と連携し、本人が移動しなくても申請できるよう配慮した。 会議に出席する際の配慮を伝えたい。 ・出席報告書に、車椅子や障害に合わせた対応について記入欄を設けている。   ■内部障害、難病のある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 難病のため、窓口での申請が困難。 ・来所できない方に対しては、自宅訪問により申請を受理した。     ■視覚障害のある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 役所に申請手続に来たが、慣れない場所なので、どこで受付すればよいのか分からない。 ・驚かせることのないように、「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけて受付窓口まで案内した。 窓口で手続きする際、書類内容の読み上げや代筆をしてほしい。 ・書類の記入内容を読み上げ、本人に確認をとり、職員による代筆を行った。 ・代筆が必要な際に口頭で伝えなくてもよいように、支援が必要と意思表示できるカードを設置した。 研修会に参加したいが、会場での移動や研修会資料が読めるか不安である。 ・移動しやすいよう出入口に近い席を受付窓口から介添えして案内したり、研修資料をPDFやテキストデータにデジタル化して事前に送付した。 ・必要に応じて点字資料を作成した。 書類等にマーカーで線を引いて説明をされて も、色が同じに見えてしまうので分からない。 ・該当箇所に数字や下線、波線等の印をつけて説明をした。 各種資料の情報を取得しやすくしてほしい。 ・点字資料の作成、音声コードの添付、デイジー版の作成、ホームページへの拡大文字・ルビ付き版やテキストデータの掲載などを実施した。 ■聴覚障害、言語障害のある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 窓口で手続きする際、聞き取りやすく話をしたり筆談対応をしてほしい。 ・筆談で対応したり、耳元でゆっくり話をしたりした。 講習会において、配付資料以外に口頭説明する内容がある場合、何らかの配慮をしてほしい。 ・聴覚障害者が講習会を受講する場合、口頭で説明する内容も配付資料に盛り込んで提供した。 会議等において、情報保障してほしい。 ・手話通訳者や要約筆記者を配置した。 ・音声文字変換機能があるアプリを使い、説明者の話を文字化して表示した。 会話や筆談することが難しいため、音声出力と文字表示ができる携帯型の意思伝達装置を持参したい。 ・窓口でのやり取りが円滑になるよう、当該機器の持参・利用が可能であることを御案内した。 会議の傍聴時にパソコンによるノートテイクを 行いたいが、パソコンの持込みが禁止されてい る。 ・一律にパソコンの持込みを禁止するのではなく、個別に判断して必要と認められる場合には持ち込めるようにした。   ■盲ろうのある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 会議に出席したときに、資料の事前送付がなく、当日は点字化した資料が用意されていなかった。また、長時間の会議であったが、休憩時間が設けられていなかった。 ・資料を事前送付するとともに、資料の概要を点字化して会議で配布した。 ・議事進行に当たっては、適時休憩を挟んだ。 通訳・介助者を同行して会議に出席したが、通訳・介助者については、 座席が決まっておらず配布資料も準備されていなかった。 ・意思疎通しやすい位置に、通訳・介助者の座席と配布資料を準備するようにした。 会議の終了予定時間が夜になっており負担が大 きい。また、介助者は 障害者を送迎してから帰 宅することになるので、更に遅い時間になって しまう。 ・夕方までに会議が終了するよう開催時間を変更した。   ■知的障害、発達障害のある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 窓口等での説明は、理解しやすいよう配慮してほしい。 ・ゆっくり簡単な日本語で説明する、絵や図を活用して説明するなど、理解しやすい丁寧な説明をしている。 調査報告書を読みたいのだが、平仮名しか読むことができないので、振り仮名を付けてほしい。 ・ページ数の多い調査報告書であるため、要点を抜粋した報告書の概要を作成し、振り仮名を付すこととした。 選挙の投票を行う際に、次々と他の投票者が来ると、急がされたような気持ちになってパニックを起こしてしまう。 ・他の投票者が少ないと予想される時間帯を前もってお知らせした。 ・実際に来場したときには、他の投票者に間隔を空けるよう依頼した。   ■精神障害のある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 大勢の人がいるところでは、どうしても周囲が気になってしまい落ち着かず、待合室での順番待ちが難しい。 ・別室の確保が困難であったため、待合室の中で、比較的周りからの視界が遮られるようなスペースに椅子を移動させ、順番待ちできるよう 配慮した。 相談しに来たが、窓口では周囲の目や音が気になる。 ・静かに相談できるよう会議室を案内した。 申請書類の記入に長い時間を要するので、役所へ行ってからその場で記入するのは気が引けてしまう。 ・外部に持ち出しても問題の生じない内容であったことから、事前に申請書類を送付しておき、役所に来るときに記入済みのものを持参していただくことにした。 窓口での申請の際、うまく手続きできるか不安がある。 ・御本人の理解状況を確認しながら、後見人にも意見を聞いて申請手続きを進めた。 ・混乱することのないよう繰り返し丁寧な説明をした。 パニックを起こしてしまうかもしれないので、説明会に単独で参加できない。 ・単独での参加が難しい参加者に対して、介助者の同行を認めた。   ■重症心身障害のある方(行政) 困りごと 配慮の具体例 来庁者用の駐車場が玄関から離れているが、重度の障害により長距離の移動は負担となるため、玄関の近くに駐車したい。 ・庁舎の玄関の近くにある空きスペースにカラーコーンを置いて、臨時の駐車場とすることで、駐車場から玄関までの移動距離が短くなるようにした。                   X 障害者差別を解消するために 条例において、障害者差別を解消するため、次の2つのことを定めています   「不当な差別的取扱いをしないこと」   「合理的配慮をすること」     これまで説明してきた、「障害者差別解消を推進するための基本的な考え方」や「障害に関する基礎的な知識」を前提として、障害者と「対話する」「相互に理解する」「協力して工夫する」ことで、障害者差別解消は推進されます。 では、どのようにすれば、これらのことができるようになるのでしょうか。  「X 障害者差別を解消するために」では、「対話する」「相互に理解する」「協力して工夫する」ための手がかりを記載しています。   【「対話する」「相互に理解する」「協力して工夫する」ための手がかり】     1 その人のことを知りましょう     2 対話をして歩み寄りましょう(建設的な対話)     3 お互いの理解が大切です     4 説明と納得が重要です     5 環境の整備をしましょう 1 その人のことを知りましょう  不当な差別的取扱いをしないためにも、合理的配慮をするためにも、その人がどのような障害があって、日常の様々な活動や社会参加をする上で困ること(社会的障壁)は何なのかを知りましょう。  このとき、V「3 障害や社会的障壁は一人ひとり異なります」(P6)のとおり、その人の障害や社会的障壁は、一人ひとり異なること、外見では障害があるかわかりにくい人もたくさんいることに注意しなければなりません。 また、同じ人であっても、周囲の状況やそのときの体調などによって、社会的障壁は必ずしも同じではなく、「この障害のある人=このことに困っている」という思い込みは、一つの社会的障壁になってしまうかもしれません。  障害や社会的障壁がわかれば、色々な工夫ができるようになります。その人を知ることは、対話の第一歩です。 なお、プライバシーに配慮することや不必要なことを聞かないことなどに注意しましょう。 【ワンポイント】  日常の様々な活動や社会参加をする上で困っていることを知ろうとするとき、障害によっては、コミュニケーションにも配慮が必要な人がいます。 ・聴覚障害のため、聞き取りづらい人がいます  聞き取りづらい人には、大きな声で話したり、紙とペン、スマートフォンやタブレット端末などを使って筆談をしたりしてみましょう。(詳しくは P17参照) ・音声機能や言語機能の障害のために、聞くこと、話すことなどが難しい人がいます  その人の状態に応じ、筆談をする、具体的でわかりやすい言葉を使う、主語や目的語をきちんと伝えることを意識するなどして話しましょう。  また、「はい」「いいえ」で答えられる質問をするなどして、その人の状況などを確認しましょう。(詳しくは P19参照) ・知的障害や発達障害などにより、理解することや話をすることが難しい人がいます    障害によっては、抽象的な言葉や難しい言葉を理解できないことがあります。  「大丈夫ですか?」とたずねたとき、言葉の意味は理解できても、「何が」大丈夫なのか、「誰が」大丈夫なのかなど質問者の意図などが理解できずに、会話がすれ違ってしまうことがあります。  簡単な言葉・具体的な言葉を使う、主語や目的語をきちんと伝えることを意識するなどして会話する、「はい」「いいえ」で答えられる質問をするなどしましょう。 (詳しくは P21(知的障害)、P23(発達障害)参照) 2 対話をして歩み寄りましょう(建設的な対話)  その人の障害や困っていることがわかったら、様々な活動や社会参加ができるよう、困っていることを解決するための工夫をしましょう。  しかし、工夫をしようとしても、やり方が難しい、時間や人、お金がたくさんかかってしまうなどの事情があって難しいことがあります。 このようなとき、「できません」と断ってしまうと、障害者差別解消は前に進みません。  そこで、心を開いてお互いが歩み寄り、どうしたら困っていることを解決できるか、自分ひとりではなく、障害者本人や周りの人も交えて、対話をしましょう。  このとき、障害者が何に困っているかを見直しながら、解決するための方法はないか、望まれる方法が難しくても他に工夫ができないかを考えるなど、前向きに対話することが大切です。このような前向きな対話を、建設的対話といいます。  また、障害者が困っていることを解決するためには、何度も話し合いが必要なこともあるでしょう。  障害者差別解消のためには、前向きに何度もやりとりをして、対話により相互理解を深めて歩み寄ることが重要です。 3 お互いの理解が大切です  コミュニケーションがうまくとれておらず、お互いに理解不足のときは、障害者の困っていることを解決しようとしたことに対しても、障害者がいやな思いをすることがあるかもしれません。  勘違いや気持ちのすれ違いが起きないよう、必要な声かけや確認などを行い、対話を進めてお互いの理解を深めましょう。 【ワンポイント】 ・店舗の通路が狭いため、必要に応じた手助けや商品説明のために、障害者を後ろから見守った。 → 常に後ろから店員がついてきて、監視されたと感じていたらどうでしょうか。自由に商品を見て回ることができなかったり、不審な人だと思われたのではないかといやな思いをしたりするかもしれません。 「近くにいますので、いつでも声をかけてください」と伝えてみては、どうでしょう。 ・障害者に、丁寧に時間をかけて商品の説明を行うため、所定の時間に来店してもらった。 → 障害者だから、来店時間を決められたと感じたらどうでしょうか。あるいは、他の時間は、来てはいけないと受け取ってしまうかもしれません。  本人の希望を聞いた上で、「丁寧な対応をするために、予約することができますよ」と伝えてみては、どうでしょう。 ・雇用主が、他者との関わりが大きな負担になる障害者に配慮して、来客の多い午後の時間ではなく、来客が比較的少ない午前の時間に業務時間を割り振った。 → 雇用主は、本人にとってよいと思われる配慮をしましたが、本人には、「午前に勤務する時間を変更すると、通院や送迎の関係から仕事が続けられなくなる」という希望や事情があったとしたらどうでしょうか。  本人の希望を聞き、どうすれば仕事を続けることが可能なのかをよく話し合いましょう。その上で、接客の少ない業務に変える、出勤時間を調整する、困ったときに相談できる人を決めるなど、本人の負担を減らす方法を話し合って決めてみては、どうでしょう。 ※ これらは例です。全ての人や状況に当てはまるものではありません。 4 説明と納得が重要です  対話により相互の理解を深めていっても、どうしてもサービスなどの利用が難しい場合や配慮して欲しいことができない場合があります。  このような場合には、多くの県民が納得できる、具体的・客観的な理由で説明できなければいけません。そして、その具体的・客観的な理由を、必ず障害者に説明しましょう。  そして、障害者の納得を得られるようにしましょう。  なお、障害者の納得が得られず対応に苦慮する場合は、県や市町などに相談してください。  事案の解決に向けて、助言や当事者間の調整を行います。 相談先は、P103、105をご覧ください。 【ワンポイント】    ○サービスなどの利用が難しい場合として、次のような理由が考えられます。 ・障害者やサービスなどを提供する人、その他の人の権利や利益を損なう可能性が高いとき → ジェットコースターで、手や足を外に出してしまう可能性が高くては、本人や周囲に危険が及ぶ可能性が高いのではないでしょうか。 ・サービスの目的や内容、機能の維持などの面からサービスが利用できないとき → 専門的知識が必要な食事の提供や排泄の介助を必要とする障害者が、一人でツアー旅行を申し込まれても、ツアー旅行の目的とは別なものになってしまうのではないでしょうか。    ○合理的配慮をすることが難しい場合として、次のようなことが考えられます。 ・合理的配慮が、もともと行っているサービスとは大きく異なる内容であるとき → 弁当の車内販売員が、食事の介助を求められても、本来のサービス内容から離れているのではないでしょうか。 ・実現できない内容であるとき → 手話のできる店員がいないお店で、いきなり手話での会話を求められても、実現できないのではないでしょうか。 ・合理的配慮をする側の規模や財務状況に比べて、負担が重すぎるとき → 小さなお店で合理的配慮をするために人をたくさん雇ったり、多くの費用がかかったりしては、経営が立ちゆかないのではないでしょうか。     この場合の理由は、抽象的ではなく、具体的でなければいけません。         ○次のような理由では、ほとんどの場合に当てはまってしまうのではないでしょうか。 ・「危険な可能性があります、他の方の迷惑になる可能性があります」 → 「障害者だと、よくわからないけど危険な可能性がある、他の人に迷惑になる」と考えていませんか?  特に、障害者やその家族は、いつも周りの人に気を遣っています。その結果、障害者でなければ普通に出かけたり参加したりすることも、ためらってしまいます。 ・「忙しくて大変です、手間がかかってしまいます」 → 急いでいる、他にやることがあるなど、忙しいことって多いですよね。また、困っていることを解決しようとすると、多少の手間はかかるものです。  対話をして、忙しいときでも解決できる方法がないか、手間がかからない方法はないかを考えてみませんか? 【一歩進めて】 困っている様子の人がいたら 声をかけましょう  私たちは、色々な立場で、障害者と出会う機会があります。道を歩いていてすれ違っただけの人だったり、同じお店や広場、建物に居合わせた人だったり、仕事をしているときにお客様としてお店に来ることもあれば、仕事の同僚ということもあるでしょう。  障害者が、道路で、お店で、色々な人がたくさんいる広場や建物で、困っている様子を想像してみてください。 そのようなとき、勇気を出して「こんにちは 何かお困りですか?」と、声をかけてみましょう。 障害者差別解消が、一歩進みます。  一方、困っている様子の人が、障害者かそうでないか、外見では判断できないこともたくさんあります。また、困っている様子に見えただけで、実際には困っていない人や、困っていることを自ら解決しようとしている人もいます。 そのようなときは、その人の意思を確認し、尊重しましょう。  困っているかもしれない人に声をかけ、配慮をしようとすることは、大変勇気がいることです。しかし、たとえ配慮が必要ない場面で声をかけたとしても、配慮しようというやさしい気持ちが伝われば、その気持ちが社会に広がっていくのではないでしょうか。  困っている様子の人に、やさしく声をかけることは、障害の有無にかかわらず共に支え合う「共生社会とちぎ」実現の、第一歩です。 5 環境の整備をしましょう (1)環境の整備とは  「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」により、行政機関や事業者は「環境の整備」に努めることとされています。 また、基本方針では、「環境の整備」の基本的な考え方を次のように説明しています。  個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を、環境の整備として行政機関等及び事業者の努力義務としている。環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、ハード面のみならず、職員に対する研修や、規定の整備等の対応も含まれることが重要である。  県では、基本方針と同様に、環境の整備は合理的配慮をしやすくするための準備であると考えています。バリアフリー化を進めたり、研修を受けたりすることは、障害者差別解消の推進にとても重要なことです。      また、県では「栃木県ひとにやさしいまちづくり条例」により、高齢者、障害者、妊産婦などの行動を阻む様々な障壁を取り除き、全ての県民が自らの意志で自由に行動でき、積極的に社会参加ができるようソフト・ハード両面のバリアフリー化により、生活環境の整備を進めています。 【ワンポイント】    ソフト・ハード両面における環境の整備として、次のようなことが考えられます。 ・段差解消のために、スロープを整備する。 ・文章の理解が苦手な人のために、ルビをふる、イラストを加える、具体的で簡潔な表現を使うなどのわかりやすい説明書を作る。 ・視力が弱い人や色の見分けが難しい人のために、文字の拡大や色の変更、文字の音声読み上げができる機能の付いたホームページを作る。 ・歩くことが難しい障害者などのために、おもいやり駐車スペースを設置する、おもいやり駐車スペースが適正に利用されるようガードマンを配置する。 ・あらかじめ様々な障害の特性やどのような合理的配慮があるかを知ることで、スムーズに合理的配慮ができるようにするために、研修を実施する。 (2)合理的配慮がしやすくなります  環境の整備は、簡単に合理的配慮ができるようになったり、合理的配慮をするための負担を減らしたりもします。 障害者も、社会参加しやすくなります。 【ワンポイント】 ・段差解消のためのスロープを常設する。 → 携帯スロープを設置したり、車椅子を持ち上げたりする必要がなくなります。 障害者も、自力で移動しやすくなります。 ・わかりやすい説明書を作る、視覚障害者が使いやすいホームページを作る。 → 問い合せが減ったり、案内が簡単になったりします。  障害者も、理解しやすくなる、自力で必要な情報を手に入れることができるようになります。 ・合理的配慮について、研修を実施する。 → スムーズに合理的配慮ができるようになり、対応にあわてることがなくなります。  障害者も、合理的配慮をしてもらうために、手間のかかる説明をする必要がなくなります。 (3)障害者だけでなく、全ての人にやさしい社会になります  環境の整備をすることは、障害者だけではなく、そのサービスや施設などを利用する全ての人にとってやさしい効果があります。  その結果、利用する人の増加や、満足度が上がるかもしれませんし、エコにつながるかもしれません。 環境の整備は、障害者への合理的配慮をしやすくするだけでなく、全ての人にとってやさしいものですので、着実に取り組んでいきましょう。 【ワンポイント】 ・段差解消のためのスロープを整備する。 → ベビーカーを押すことが簡単になります。高齢者や妊産婦などがつまづきづらくなります。 ・わかりやすい説明書を作る、情報の取得や利用がしやすいホームページを作る。 → 誰でも、内容を理解することや欲しい情報にたどり着くことが、簡単になります。 ・合理的配慮について、職員研修を実施する。 → 障害者ではなくても、大きな怪我をしていたり、体調がすぐれなかったりする人もいます。そのような人にも配慮できるようになります。 ・暗い通路に、人感センサー付きライトを取り付ける。 → 節電しながら、暗いところで見づらい人や歩行に危険を伴う人が通りやすくなります。      防犯に役立つかもしれません。   【一歩進めて】 配慮や環境の情報を発信しましょう  これまでの取組を実践して、不当な差別的取扱いをしないようにしたり、合理的配慮を行ったり、環境の整備を行ったりすることで、障害者差別の解消は進んでいきます。  しかし、障害者は、どのような配慮をしてもらえるのか、どのような環境が整えられているかを知ることができなければ、積極的に社会参加することができません。  手話ができる人がいるか、お店や施設でどんな配慮をすることができるか、オストメイト対応のトイレがあるかなどバリアフリーの詳細について、ホームページなどで発信していきましょう。 これも、一つの環境の整備です。 【少し深めて】 相談事例から考えてみましょう 県では、障害者差別に関する相談を受けています。 その中で、障害者差別解消のための参考となる事例や県の考え方を記載します。 〜介助犬と一緒に美術館を利用したい〜 ○ 相談内容  車椅子利用者で、介助犬を連れた人が美術館に行ったところ、利用の際に、職員が同行することを伝えられました。  これは、障害があるから職員が同行しなければ館内を見てはいけないといっているのだから、不当な差別的取扱いではないかと、県に相談がありました。 ○ 対応 県では、美術館に状況を確認しました。  美術館は、館内に暗く狭い場所があること、他の客が介助犬を暗い中で踏みつけてしまうなどの危険性があったこと、職員の同行とは後ろから見守ることであり、自由な鑑賞を妨げるつもりはなかったとのことでした。  ただし、介助犬を連れた人が入館の申込みをしたとき、どのように対応するかを決めていなかったため、相談者を待たせてしまったとのことでした。  県としては、職員が同行することはやむを得ない対応であり、不当な差別的取扱いには当たらないと考え、相談者に連絡して納得してもらいました。  また、美術館には、介助犬を連れた人などへの対応の仕方を決めておくように助言し、対応が統一されました。 ○ 県の考え方  この事例のポイントは、介助犬を連れた人と美術館との間で、コミュニケーションがうまくできていなかったことと考えます。  職員の同行という対応はやむを得なかったとしても、それを伝えるまでに時間がかかってしまい、美術館の考え方がきちんと伝わらなかったのではないでしょうか。  介助犬を連れた人が来館した場合、どのような対応をすればよいかを決めて、職員研修を行うといった環境の整備ができていれば、相談者がスムーズに鑑賞できたのではないかと考えられます。 ○ 補足  障害者に配慮して特別な対応を行うこと(見守ったり、必要に応じて手助けしたりすること)が必要な場面もありますが、全てが望ましい対応とはいえません。 ※ 暗く狭い場所があること、他のお客が介助犬を暗い中で踏みつけてしまうなどの危険性があったことなどから、やむを得ないケースであると考えました。また、県に寄せられた事例で次のようなケースがありました。  ホテルを利用したとき、宿泊プランにあったバイキングではなく、自室に、バイキングメニューよりもグレードアップされた食事が運ばれてきた。  ホテルは、障害者に配慮して、落ち着いた環境でおいしい食事を食べて欲しいと考えてくれたのかもしれないし、おいしい食事も食べられてよかった。しかし、本当はバイキングも体験してみたかった。  「落ち着いてお食事をしていただきたいので、お部屋にお持ちすることもできますよ」と伝えるなど、この人とホテルのスタッフとでよくお話がされていれば、より高い満足や納得が得られるサービスとなったのではないでしょうか。  また、障害の有無にかかわらず、このようなコミュニケーションがされれば、魅力のあるとちぎになるのではないでしょうか。 おわりに  障害者は決して特別な存在ではなく、身近な地域で暮らす隣人です。障害があって生まれた人、事故や病気で障害者となった人もいます。また、家族や支援者に見守られて過ごしている人、一人で自立した生活を送っている人もいます。  障害の有無によって分け隔てられることなく、学校で学ぶ、仕事をする、買い物をする、余暇を楽しむ、電車やバスに乗るなどの様々な場面において社会参加することができるようになれば、障害者一人ひとりが、その人らしく暮らしていけるようになります。  そして、地域での暮らしの中で、その人らしさが発揮されるようになれば、障害の有無にかかわらず共に支え合う、活力ある社会をつくることができます。  そうした「共生社会とちぎ」を実現するためには、一部の人が特別な人にすればよいと考えることなく、障害及び障害者に関する理解を深め、心のバリアを取り除いていくことがはじめの一歩となります。  そのため、この指針に記載されている内容や様々な情報を入手し、知識を身につけることは重要ですが、さらに、私たち一人ひとりが、身近にいる障害者と接して、話をしたり、同じ体験を共有したりすることができれば、障害や障害者への理解をより深めることができるのではないでしょうか。 そのことが、障害者差別解消への具体的な行動につながっていくと考えています。  障害の有無にかかわらず、困ったときに、周囲の人たちが気軽に助け合ったり、どこからか「こんにちは 何かお困りですか?」と声がかかり、助けの手が差し伸べられたりする社会が、私たちが目指す社会です。  障害者差別解消は、そうした地域社会づくりへの新たなチャレンジです。「共生社会とちぎ」の実現に向けて、身近なことから着実に取り組みましょう。 参考資料  栃木県障害者差別解消推進条例    平成28年3月25日栃木県条例第14号    前 文  全ての者は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人として尊重されなければならない。  これまで、障害者の自立と社会参加に向けた国内法の整備や障害者の権利に関する条約の批准などが進められる中、本県においては、障害者が、自らの意思によって、地域で暮らし、個性や能力を発揮することができる地域社会の実現に向けた様々な取組を進めてきた。  しかしながら、障害や障害者に対する誤解や偏見などにより、障害を理由として不当な取扱いを受けるなど、障害者が日常生活や社会生活を営む上で妨げとなる差別は依然として存在する。  こうした状況の中、誰もが安心して暮らせるふるさと栃木県として今後も発展していくためには、全ての県民が、障害や障害者に関する理解を十分に深めて、障害を理由とする差別の解消に向けた取組を一層進めていく必要がある。  ここに、私たちは、全ての県民が、障害の有無にかかわらず、共に支え合う地域社会の実現を目指し、障害者差別の解消に県を挙げて取り組むことを決意し、この条例を制定する。   第1章 総則  (目的) 第1条 この条例は、障害を理由とする差別(以下「障害者差別」という。)の解消に関し、基本理念を定め、並びに県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、障害者差別の解消に関する施策の基本となる事項を定めることにより、障害者差別の解消に関する施策を総合的に推進し、もって全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 2 この条例において「社会的障壁」とは、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 3 この条例において「事業者」とは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第2条第7号に規定する事業者のうち、県の区域内において商業その他の事業を行う者をいう。  (基本理念) 第3条 障害者差別の解消は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人として全ての県民の尊厳が重んぜられること及びその尊厳にふさわしい地域生活を営む権利が尊重されることを基本として推進されなければならない。 2 障害者差別の解消は、障害及び障害者に対する誤解、偏見その他理解の不足の解消が重要であることから、全ての県民及び事業者が、多様な人々により地域社会が構成されているという基本的認識の下に、障害及び障害者に関する理解を深めることを基本として推進されなければならない。 3 障害者差別の解消は、地域社会を構成する多様な主体が、相互に協力することを基本として推進されなければならない。  (県の責務) 第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害者差別の解消に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。  (県と市町村との協力) 第5条 県及び市町村は、それぞれが実施する障害者差別の解消に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。  (県民及び事業者の責務) 第6条 県民及び事業者は、基本理念にのっとり、障害及び障害者に関する理解を深めるとともに、県及び市町村が実施する障害者差別の解消に関する施策に協力するよう努めなければならない。 第2章 障害者差別の解消に関する基本的施策  (障害者差別対応指針) 第7条 知事は、障害者差別に関する事項に関し、県民及び事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「障害者差別対応指針」という。)を定めるものとする。 2 知事は、障害者差別対応指針を策定しようとするときは、あらかじめ、県民及び事業者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、栃木県障害者差別解消推進委員会(以下「委員会」という。)の意見を聴かなければならない。 3 知事は、障害者差別対応指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 4 前2項の規定は、障害者差別対応指針の変更について準用する。  (相談体制の充実等) 第8条 県は、障害者差別に関する相談に適切に応じられるよう、相談体制の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。  (啓発活動並びに教育及び学習の推進) 第9条 県は、県民及び事業者が障害者差別の解消の重要性について認識し、障害及び障害者に関する理解を深めることができるよう、必要な啓発活動を行うとともに、教育及び学習の推進に努めるものとする。  (表彰) 第10条 知事は、障害者差別の解消の推進について特に顕著な功績があると認められる者を表彰することができる。  (財政上の措置) 第11条 県は、障害者差別の解消に関する施策を総合的に策定し、及び実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 第3章 障害者差別を解消するための措置  (障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止) 第12条 何人も、障害者の生命又は身体の安全の確保のためやむを得ないと認められる場合その他の正当な理由がある場合を除き、障害を理由として次に掲げる行為をしてはならない。 (1) 障害者が福祉サービスを利用することを拒否し、制限し、若しくはこれに条件を付し、又は強制すること。 (2) 障害者が医療を受けることを拒否し、制限し、若しくはこれに条件を付し、又は強制すること。 (3) 障害者が年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた教育を受けることを拒否し、制限し、又はこれに条件を付すこと。 (4) 障害者が多数の者の利用に供される建物その他の施設又は公共交通機関を利用することを拒否し、制限し、又はこれに条件を付すこと。 (5) 障害者との間で不動産の売買又は賃貸借、賃借権の譲渡若しくは賃借物の転貸に係る契約を締結することを拒否し、制限し、又はこれに条件を付すこと。 (6) 前各号に掲げるもののほか、障害者が商品を購入すること又はサービスを利用することを拒否し、制限し、又はこれらに条件を付すこと。 (7) 労働者の募集又は採用に関し、障害者の応募又は採用を拒否し、制限し、又はこれらに条件を付すこと。 (8) その雇用する障害者の賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について障害者でない者と差別的取扱いをし、又は障害者を解雇すること。 (9) 障害者への情報の提供を拒否し、制限し、又はこれに条件を付すこと。 (10) 障害者からの意思表示の受領を拒否し、制限し、又はこれに条件を付すこと。 (11) 前各号に掲げるもののほか、障害者でない者と差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害すること。  (社会的障壁の除去のための合理的配慮) 第13条 県は、その事務又は事業を行うに当たり、社会的障壁の除去を必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 2 県民は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするよう努めなければならない。 3 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。  (相談) 第14条 県は、障害者差別に関する相談があったときは、必要に応じ、次に掲げる措置を講ずるものとする。 (1) 当該相談に係る関係者に情報の提供及び助言を行うこと。 (2) 当該相談に係る関係者相互間の調整を行うこと。 (3) 関係行政機関に通告、通報、通知等を行うこと。  (あっせん) 第15条 障害者は、自己に対する事業者による第12条又は第13条第3項の規定に違反する行為(以下「あっせん対象行為」という。)に係る事案について、前条の相談によっては解決されないときは、知事に対し、当該事案の解決のために必要なあっせんを求める申立てをすることができる。 2 あっせん対象行為の対象となった障害者の保護者(配偶者、親権を行う者、後見人その他の者で、障害者を現に保護するものをいう。)及びこれに準ずる者として知事が認める者は、当該あっせん対象行為に係る事案について、前条の相談によっては解決されないときは、知事に対し、当該事案の解決のために必要なあっせんを求める申立てをすることができる。ただし、当該申立てをすることが明らかに当該障害者の意に反すると認められるときは、この限りでない。 第16条 知事は、前条第1項又は第2項の規定による申立てがあったときは、あっせんを行う必要がないと認めるとき又はあっせん対象行為に係る事案の性質上あっせんを行うことが適当でないと認めるときを除き、委員会にあっせんを行わせるものとする。 2 委員会は、前項の規定によるあっせんを行うため必要があると認めるときは、あっせん対象行為に係る事案の関係者に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができる。  (勧告) 第17条 委員会は、あっせん案が提示された場合においてあっせん対象行為をしたと認められる事業者が正当な理由なく当該あっせん案を受諾しないときは、知事に対し、当該あっせん案を受諾することその他必要な措置を講ずべきことを勧告するよう求めることができる。 2 知事は、前項の規定による委員会の求めに応じて、当該求めに係る事業者に対し、当該あっせん案を受諾することその他必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。  (公表) 第18条 知事は、前条第2項の規定による勧告を受けた事業者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、当該勧告の内容その他規則で定める事項を公表することができる。 2 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該事業者に対し、その公表の理由を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。 第4章 栃木県障害者差別解消推進委員会 第19条 この条例の規定によりその権限に属させられた事務を処理し、及び知事の諮問に応じ、障害者差別の解消の推進に関する事項を調査審議するため、委員会を置く。 2 委員会は、前項に規定するもののほか、障害者差別の解消の推進に必要と認められる事項について、知事に意見を述べることができる。 3 委員会は、前2項に規定するもののほか、障害者差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害者差別を解消するための取組に関する情報の交換及び協議を行うことができる。 4 委員会は、委員30人以内で組織する。 5 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。 (1) 学識経験を有する者 (2) 障害者又はその家族 (3) 障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者 (4) 事業者又はその団体の役職員 (5) 関係行政機関の職員 (6) 前各号に掲げる者のほか、知事が適当と認める者 6 委員の任期は、3年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 7 委員は、再任されることができる。 8 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。 9 委員会に、第16条第1項の規定によるあっせんその他必要な事務を処理するため、部会を置くことができる。 10 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。  (平30条例10・一部改正) 第5章 雑則  (規則への委任) 第20条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。   附 則 1 この条例は、平成28年4月1日から施行する。ただし、第15条から第18条までの規定は、同年10月1日から施行する。 2 知事は、この条例の施行後3年を経過した場合において、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行の状況を勘案しつつ、この条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。   附 則(平成30年条例第10号) 1 この条例は、平成30年4月1日から施行する。 2 (略)      附 則(令和5年条例第42号)  この条例は、令和6年4月1日から施行する。     栃木県障害者差別解消推進条例施行規則 平成28年3月31日 栃木県規則第33号  (趣旨) 第1条 この規則は、栃木県障害者差別解消推進条例(平成28年栃木県条例第14号。以下      「条例」という。)の施行に関し必要な事項を定めるものとする。  (定義) 第2条 この規則で使用する用語は、条例で使用する用語の例による。  (あっせんの申立て) 第3条 条例第15条第1項又は第2項の規定による申立ては、あっせん申立書(別記様式)により行うものとする。  (公表) 第4条 条例第18条第1項の規則で定める事項は、次に掲げる事項とする。 1 勧告を受けた事業者の氏名(法人にあっては、名称及び代表者の氏名) 2 勧告を受けた事業者の住所(法人にあっては、主たる事務所の所在地)  (委員会の委員長及び副委員長) 第5条 栃木県障害者差別解消推進委員会(以下「委員会」という。)に委員長及び副委員長一人を置き、委員の互選によりこれを定める。 2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。 3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるときは、その職務を代理する。  (委員会の会議) 第6条 委員会の会議は、委員長が招集し、委員長が議長となる。 2 委員会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。 3 委員会の議事は、出席した委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。  (委員会の権利調整部会) 第7条 条例第16条第1項及び第2項並びに第17条第1項の規定による事務を処理するため条例第19条第9項の規定により置かれる部会(以下「権利調整部会」という。)は、委員長が指名する学識経験を有する者、障害者又はその家族、障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者並びに事業者又はその団体の役職員である委員各一人以上をもって組織する。 2 権利調整部会に部会長を置き、権利調整部会に属する委員の互選によりこれを定める。 3 部会長は、権利調整部会の事務を掌理する。 4 部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。 5 権利調整部会の会議は、部会長が招集し、部会長が議長となる。 6 前条第2項及び第3項の規定は、権利調整部会について準用する。 7 委員会は、その定めるところにより、権利調整部会の議決をもって委員会の議決とすることができる。 8 部会長は、権利調整部会における調査審議の状況及び結果を委員長に報告するとともに、前項の議決がされた場合には、次の委員会の会議においてこれを報告するものとする。 9 前各項に定めるもののほか、権利調整部会の運営に関し必要な事項は、部会長が委員長の同意を得て定める。  (委員会の庶務) 第8条 委員会の庶務は、保健福祉部障害福祉課において処理する。  (雑則) 第9条 第5条から前条までに定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が委員会に諮って定める。   附 則  この規則は、平成28年4月1日から施行する。ただし、第3条、第4条、第7条及び別記様式の規定は、同年10月1日から施行する。 別記様式(第3条関係) あっせん申立書 年   月   日 栃木県知事 様 申立人 住 所 氏 名      連 絡 先 栃木県障害者差別解消推進条例第15条第1項又は第2項の規定により下記のとおり申立てをします。   記 1 あっせん対象行為に係る障害者 (1)住所 (2)氏名 (3)申立人との関係 2 あっせん対象行為に係る事業者 (1)住所(法人にあっては、主たる事務所の所在地) (2)氏名(法人にあっては、名称及び代表者の氏名) 3 栃木県障害者差別解消推進条例第14条の相談の状況 4 求めるあっせんの内容 5 その他参考となる事項  栃木県障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例  令和4年3月23日栃木県条例第5号   (目的) 第1条 この条例は、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関し、基本理念を定め、並びに県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策を総合的に推進し、もって全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 2 この条例において「社会的障壁」とは、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 3 この条例において「障害の特性に応じたコミュニケーション手段」とは、手話、点字、要約筆記(口述を要約して文字により表示することをいう。以下同じ。)、触手話(手話を行っている者の手に触れることにより意思疎通を行うことをいう。)、指点字(点字用のタイプライターを使用する際の手の動作で相手の手に触れることにより意思疎通を行うことをいう。)、筆談、代筆、代読、平易な表現、表情、身振り、手振り、実物又は絵若しくは図形の提示、情報通信機器の利用その他の障害者が他人との意思疎通を図るための障害の特性に応じた手段をいう。 4 この条例において「意思疎通支援者」とは、手話通訳、要約筆記、失語症を有する者向けの意思疎通支援(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第77条第1項第6号に規定する意思疎通支援をいう。)、盲ろう者(視覚障害及び聴覚障害を併せ有する者をいう。)向けの通訳若しくは介助、点訳(文字を点字に訳すことをいう。)、代筆、代読又は音声訳(文字、図形等を音声を用いて表すことをいう。)を行う者その他の障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用した意思疎通を支援する者をいう。  (基本理念) 第3条 障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進は、障害者の自立及び社会参加のためには社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮が重要であるとの認識の下に行われなければならない。 2 障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進は、全ての障害者が、言語(手話を含む。)その他の意思疎通を図るための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることが重要であるとの認識の下に行われなければならない。  (県の責務) 第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。  (県と市町村との協力) 第5条 県及び市町村は、それぞれが実施する障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。  (県民の責務) 第6条 県民は、基本理念にのっとり、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する理解を深めるよう努めるとともに、県及び市町村が実施する障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。  (事業者の責務) 第7条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、障害者が障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用できるようにするために必要な配慮をするよう努めるとともに、県及び市町村が実施する障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。  (学校教育の分野における利用の促進) 第8条 県は、学校教育の分野において、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進するため、必要な施策を講ずるものとする。  (県民に対する啓発活動等) 第9条 県は、県民が障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進の重要性について認識し、障害及び障害者に関する理解を深めることができるよう、必要な啓発活動を行うとともに、教育及び学習の推進に努めるものとする。 2 県は、意思疎通支援者と連携し、障害者及びその保護者が障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用するために必要な知識及び技能を習得することができるよう、障害の特性に応じたコミュニケーション手段に関する学習の機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。  (県民及び事業者が行う活動への支援) 第10条 県は、県民及び事業者が行う障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する活動を支援するため、相談体制の充実、情報の提供、助言その他の必要な施策を講ずるものとする。  (意思疎通支援者等の養成等) 第11条 県は、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用が円滑に行われるよう、意思疎通支援者及びその指導者の養成のための研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。  (県政等に関する情報の取得の円滑化) 第12条 県は、障害者が県政等に関する情報を円滑に取得することができるようにするため、障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用して県政等に関する情報を発信するよう努めるものとする。  (災害時等における連絡体制の整備等) 第13条 県は、市町村その他関係機関と連携し、災害その他非常の事態の場合において、障害者が必要な情報を取得するとともに、避難所等において他人との意思疎通を円滑に行うことができるよう、障害者の家族及び障害者を支援する者の協力を得つつ、災害その他非常の事態の場合における障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用した連絡体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。  (財政上の措置) 第14条 県は、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。   附 則  この条例は、令和4年4月1日から施行する。               障害者基本法(昭和45年5月21日法律第84号)(抄)  (目的) 第1条 この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。  (定義) 第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) 社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。  (地域社会における共生等) 第3条 第1条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。 (1) 全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 (2) 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。 (3) 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。  (差別の禁止) 第4条 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。 2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。 3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号) 第1章 総則  (目的) 第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。  (定義) 第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (3) 行政機関等 国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第三章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第7号、第10条及び附則第4条第1項において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。  (4) 国の行政機関 次に掲げる機関をいう。 イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置  かれる機関 ロ 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第1項及び第    2項に規定する機関(これらの機関のうちニの政令で定める機関が置かれる機関にあっ    ては、当該政令で定める機関を除く。) ハ 国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第1項に規定する機関(ホの政令  で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) ニ 内閣府設置法第39条及び第55条並びに宮内庁法(昭和22年法律第70号)第16条 第2項の機関並びに内閣府設置法第40条及び第56条(宮内庁法第18条第1項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの ホ 国家行政組織法第8条の2の施設等機関及び同法第8条の3の特別の機関で、政令で  定めるもの ヘ 会計検査院  (5) 独立行政法人等 次に掲げる法人をいう。 イ 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。ロにおいて同じ。) ロ 法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(独立行政法人を除く。)又は特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、政令で定めるもの (6) 地方独立行政法人 地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定     する地方独立行政法人(同法第21条第3号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。  (7) 事業者 商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行 政法人を除く。)をいう。  (国及び地方公共団体の責務) 第3条 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。 2 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策の効率的かつ効果的な実施が促進されるよう、適切な役割分担を行うとともに、相互に連携を図りながら協力しなければならない。  (国民の責務) 第4条 国民は、第1条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。  (社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備) 第5条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 第2章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 第6条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。  (1) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向  (2) 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事   項  (3) 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 (4) 国及び地方公共団体による障害を理由とする差別を解消するための支援措置の実施に関する基本的な事項  (5)その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項  (6)その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。 4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。 5 内閣総理大臣は、第3項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。 6 前3項の規定は、基本方針の変更について準用する。 第3章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置  (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) 第7条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。  (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするようにしなければならない。  (国等職員対応要領) 第9条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第7条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第3条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。 2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。 3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 4 前2項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。  (地方公共団体等職員対応要領) 第10条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第7条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第4条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。 2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。 4 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。 5 前3項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。  (事業者のための対応指針) 第11条 主務大臣は、基本方針に即して、第8条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。 2 第9条第2項から第4項までの規定は、対応指針について準用する。  (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告) 第12条 主務大臣は、第8条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。  (事業主による措置に関する特例) 第13条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによる。 第4章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置  (相談及び紛争の防止等のための体制の整備) 第14条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。  (啓発活動) 第15条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。  (情報の収集、整理及び提供) 第16条 国は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、国内外における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。 2 地方公共団体は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、地域における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うよう努めるものとする。 (障害者差別解消支援地域協議会) 第17条 国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第2項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会  (以下「協議会」という。)を組織することができる。 2 前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。 (1) 特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他の団体 (2) 学識経験者  (3) その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者  (協議会の事務等) 第18条 協議会は、前条第1項の目的を達するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。 2 関係機関及び前条第2項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。 3 協議会は、第1項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者及び差別に係る事案に関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。 4 協議会の庶務は、協議会を構成する地方公共団体において処理する。 5 協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。  (秘密保持義務) 第19条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。  (協議会の定める事項) 第20条 前3条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。 第5章 雑則  (主務大臣) 第21条 この法律における主務大臣は、対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会とする。  (地方公共団体が処理する事務) 第22条 第12条に規定する主務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、地方公共団体の長その他の執行機関が行うこととすることができる。  (権限の委任) 第23条 この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、その所属の職員に委任することができる。  (政令への委任) 第24条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。 第6章 罰則 第25条 第19条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 第26条 第12条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処する。 附 則  (施行期日) 第1条 この法律は、平成28年4月1日から施行する。ただし、次条から附則第6条までの規定は、公布の日から施行する。  (基本方針に関する経過措置) 第2条 政府は、この法律の施行前においても、第6条の規定の例により、基本方針を定めることができる。この場合において、内閣総理大臣は、この法律の施行前においても、同条の規定の例により、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた基本方針は、この法律の施行の日において第6条の規定により定められたものとみなす。  (国等職員対応要領に関する経過措置) 第3条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、この法律の施行前においても、第9条の規定の例により、国等職員対応要領を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた国等職員対応要領は、この法律の施行の日において第9条の規定により定められたものとみなす。  (地方公共団体等職員対応要領に関する経過措置) 第4条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、この法律の施行前においても、第10条の規定の例により、地方公共団体等職員対応要領を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた地方公共団体等職員対応要領は、この法律の施行の日において第10条の規定により定められたものとみなす。  (対応指針に関する経過措置) 第5条 主務大臣は、この法律の施行前においても、第11条の規定の例により、対応指針を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた対応指針は、この法律の施行の日において第11条の規定により定められたものとみなす。  (政令への委任) 第6条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。  (検討) 第7条 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、第8条第2項に規定する社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。  (障害者基本法の一部改正) 第8条 障害者基本法の一部を次のように改正する。  第32条第2項に次の一号を加える。 (4) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の規定に よりその権限に属させられた事項を処理すること。  (内閣府設置法の一部改正) 第9条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。  第四条第三項第四十四号の次に次の一号を加える。 (44の2) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65)第6条第1項に規定するものをいう。)の作成及び推進に関すること。    附 則 (令和3年6月4日法律第56号)  この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。     障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針  政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第6条第1項の規定に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定する。基本方針は、障害を理由とする差別の解消に向けた、政府の施策の総合的かつ一体的な実施に関する基本的な考え方を示すものである。 第1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 1 法制定の背景及び経過  近年、障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し、平成18年に国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択された。我が国は、平成19年に権利条約に署名し、以来、国内法の整備を始めとする取組を進めてきた。  権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全ての適当な措置を求めている。我が国においては、平成16年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さらに、平成23年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条第2号において、社会的障壁について、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定された。  法は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定された。我が国は、本法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26年1月に権利条約を締結した。  また、令和3年6月には、事業者による合理的配慮の提供を義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、相談体制の充実や情報の収集・提供など障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化を内容とする改正法が公布された(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号))。   2 基本的な考え方 (1)法の考え方  法は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進することで、共生社会の実現に資することを目的としている。全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要である。このため、法は、後述する、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、行政機関等及び事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取組を求めるとともに、普及啓発活動等を通じて、障害者も含めた国民一人一人が、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促している。  特に、法に規定された合理的配慮の提供に当たる行為は、既に社会の様々な場面において日常的に実践されているものもある。こうした取組を広く社会に示しつつ、また、権利条約が採用する、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとする、いわゆる「社会モデル」の考え方の国民全体への浸透を図ることによって、国民一人一人の障害に関する正しい知識の取得や理解が深まるとともに、障害者や行政機関等・事業者、地域住民といった様々な関係者の建設的対話による協力と合意により、共生社会の実現という共通の目標の実現に向けた取組が推進されることを期待するものである。   (2)基本方針と対応要領・対応指針との関係  基本方針に即して、国の行政機関の長及び独立行政法人等においては、当該機関の職員の取組に資するための対応要領を、主務大臣においては、事業者における取組に資するための対応指針を作成することとされている。地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人(以下「地方公共団体等」という。)については、地方分権の観点から、対応要領の作成は努力義務とされているが、積極的に取り組むことが望まれる。  対応要領及び対応指針は、法に規定された不当な差別的取扱い及び合理的配慮について、障害種別に応じた具体例も盛り込みながら分かりやすく示しつつ、行政機関等の職員に徹底し、事業者の取組を促進するとともに、広く国民に周知するものとする。   (3)条例との関係  地方公共団体においては、障害を理由とする差別の解消に向けた条例の制定が進められるなど、各地で障害を理由とする差別の解消に係る気運の高まりが見られるところである。法との関係では、地域の実情に即した既存の条例(いわゆる上乗せ・横出し条例を含む。)については引き続き効力を有し、また、新たに制定することも制限されることはなく、障害者にとって身近な地域において、条例の制定も含めた障害を理由とする差別を解消する取組の推進が望まれる。   第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項 1 法の対象範囲 (1)障害者  対象となる障害者は、法第2条第1号に規定する障害者、即ち、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。)(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものである。これは、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者の定義と同様であり、いわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえている。したがって、法が対象とする障害者の該当性は、当該者の状況等に応じて個別に判断されることとなり、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。   (2)事業者  対象となる事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者である。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となり、また対面やオンラインなどサービス等の提供形態の別も問わない。   (3)対象分野  法は、日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となる。ただし、行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされている。   2 不当な差別的取扱い (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方 ア 法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する。  また、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。 イ したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 (2)正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。行政機関等及び事業者においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例及び正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例としては、次のようなものがある。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意する。  (正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例) ・ 障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること。 ・ 業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる場所での対応を行うこと。 ・ 障害があることを理由として、障害者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げること。 ・ 障害があることを理由として、具体的場面や状況に応じた検討を行うことなく、障害者に対し一律に保護者や支援者・介助者の同伴をサービスの利用条件とすること。  (正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例) ・ 実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害特性のある障害者に対し、当該実習とは別の実習を設定すること。(障害者本人の安全確保の観点) ・ 飲食店において、車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行うこと。(事業者の損害発生の防止の観点) ・ 銀行において口座開設等の手続を行うため、預金者となる障害者本人に同行した者が代筆をしようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の取引意思等を確認すること。(障害者本人の財産の保全の観点) ・ 電動車椅子の利用者に対して、通常よりも搭乗手続や保安検査に時間を要することから、十分な研修を受けたスタッフの配置や関係者間の情報共有により所要時間の短縮を図った上で必要最小限の時間を説明するとともに、搭乗に間に合う時間に空港に来てもらうよう依頼すること。(事業の目的・内容・機能の維持の観点)  行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、行政機関等及び事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。   3 合理的配慮 (1)合理的配慮の基本的な考え方 ア 権利条約第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。  法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等及び事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を行うこと(以下「合理的配慮」という。)を求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。 イ 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものである。また、その内容は、後述する「環境の整備」に係る状況や、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。  合理的配慮は、行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。その提供に当たってはこれらの点に留意した上で、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、当該障害者本人の意向を尊重しつつ「(2)過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素も考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされる必要がある。  建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と行政機関等・事業者が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要である。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、行政機関等や事業者が対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられる。 ウ 現時点における合理的配慮の一例としては以下の例が挙げられる。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、あらゆる事業者が必ずしも実施するものではないこと、以下の例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意する。 (合理的配慮の例) ・ 車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境に係る対応を行うこと。 ・ 筆談、読み上げ、手話、コミュニケーションボードの活用などによるコミュニケーション、振り仮名や写真、イラストなど分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通に係る対応を行うこと。 ・ 障害の特性に応じた休憩時間の調整や必要なデジタル機器の使用の許可などのルール・慣行の柔軟な変更を行うこと。 ・ 店内の単独移動や商品の場所の特定が困難な障害者に対し、店内移動と買物の支援を行うこと。  また、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例及び該当しないと考えられる例としては、次のようなものがある。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについては、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であることに留意する。 (合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例) ・ 試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。 ・ イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること。 ・ 電話利用が困難な障害者から電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに対応を断ること。 ・ 自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。 (合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例) ・ 飲食店において、食事介助等を求められた場合に、当該飲食店が当該業務を事業の一環として行っていないことから、その提供を断ること。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点) ・ 抽選販売を行っている限定商品について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、当該商品をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断ること。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点) ・ オンライン講座の配信のみを行っている事業者が、オンラインでの集団受講では内容の理解が難しいことを理由に対面での個別指導を求められた場合に、当該対応はその事業の目的・内容とは異なるものであり、対面での個別指導を可能とする人的体制・設備も有していないため、当該対応を断ること。(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことの観点) ・ 小売店において、混雑時に視覚障害者から店員に対し、店内を付き添って買物の補助を求められた場合に、混雑時のため付添いはできないが、店員が買物リストを書き留めて商品を準備することができる旨を提案すること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)  また、合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。 エ 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。その際には、社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることが望ましい。  また、障害者からの意思表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行う意思の表明も含む。なお、意思の表明が困難な障害者が、家族や支援者・介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。   (2)過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、行政機関等及び事業者において、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際には前述のとおり、行政機関等及び事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。 ○ 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 ○ 事務・事業規模 ○ 財政・財務状況 (3)環境の整備との関係  ア 環境の整備の基本的な考え方  法は、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を、環境の整備として行政機関等及び事業者の努力義務としている。環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、ハード面のみならず、職員に対する研修や、規定の整備等の対応も含まれることが重要である。  障害を理由とする差別の解消のための取組は、法や高齢者、障害者等の移動等の年法律第号)等不特定多数の障害者を対象 とした事前的な措置を規定する法令に基づく環境の整備に係る施策や取組を着実に 進め、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である。  円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)等不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令に基づく環境の整備に係る施策や取組を着実に進め、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である。  イ合理的配慮と環境の整備  環境の整備は、不特定多数の障害者向けに事前的改善措置を行うものであるが、合理的配慮は、環境の整備を基礎として、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して、個別の状況に応じて講じられる措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。   合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る一例としては以下の例が挙げられる。 ・ 障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう、あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う(環境の整備)とともに、障害者から代筆を求められた場合には、研修内容を踏まえ、本人の意向を確認しながら店員が代筆する(合理的配慮の提供)。 ・ オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う(環境の整備)。なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことや、相談・紛争事案を事前に防止する観点からは合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、行政機関等及び事業者の内部規則やマニュアル等の制度改正等の環境の整備を図ることは有効である。また環境の整備は、障害者との関係が長期にわたる場合においても、その都度の合理的配慮の提供が不要となるという点で、中・長期的なコストの削減・効率化にも資することとなる。 第3行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方  行政機関等においては、その事務・事業の公共性に鑑み、障害を理由とする差別の解消に率先して取り組む主体として、不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供が法的義務とされており、国の行政機関の長及び独立行政法人等は、当該機関の職員による取組を確実なものとするため、対応要領を定めることとされている。行政機関等における差別禁止を確実なものとするためには、差別禁止に係る具体的取組と併せて、相談窓口の明確化、職員の研修・啓発の機会の確保等を徹底することが重要であり、対応要領においてこの旨を明記するものとする。 2 対応要領 (1)対応要領の位置付け及び作成・変更手続  対応要領は、行政機関等が事務・事業を行うに当たり、職員が遵守すべき服務規律の一環として定められる必要があり、国の行政機関であれば、各機関の長が定める訓令等が、また、独立行政法人等については、内部規則の様式に従って定められることが考えられる。  国の行政機関の長及び独立行政法人等は、対応要領の作成・変更に当たり、障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催、障害者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成等の後は、対応要領を公表しなければならない。   (2)対応要領の記載事項  対応要領の記載事項としては、以下のものが考えられる。なお、具体例を記載する際には、障害特性や年齢、性別、具体的な場面等を考慮したものとなるよう留意することとする。  ○ 趣旨  ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方  ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例  ○ 相談体制の整備  ○ 職員への研修・啓発   3 地方公共団体等における対応要領に関する事項  地方公共団体等における対応要領の作成については、地方分権の趣旨に鑑み、法においては努力義務とされている。地方公共団体等において対応要領を作成・変更する場合には、2(1)及び(2)に準じて行われることが望ましい。国は、地方公共団体等における対応要領の作成等に関し、適時に資料・情報の提供、技術的助言など、所要の支援措置を講ずること等により協力しなければならない。 第4 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 1 基本的な考え方  事業者については、令和3年の法改正により、合理的配慮の提供が法的義務へと改められた。これを契機として、事業者においては、各主務大臣が作成する対応指針に基づき、合理的配慮の必要性につき一層認識を深めることが求められる。主務大臣においては、所掌する分野の特性を踏まえたきめ細かな対応を行うものとする。各事業者における取組については、障害を理由とする差別の禁止に係る具体的取組はもとより、相談窓口の整備、事業者の研修・啓発の機会の確保、個別事案への対応を契機とした障害を理由とする差別の解消の推進に資する内部規則やマニュアルなど制度等の整備等も重要であり、対応指針の作成・変更に当たっては、この旨を明記するものとする。   2 対応指針 (1)対応指針の位置付け及び作成・変更手続  主務大臣は、個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を作成するものとされている。作成・変更に当たっては、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成等の後は、対応指針を公表しなければならない。  対応指針は事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込まれる合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに限られるものではない。事業者においては、対応指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。  また、対応指針は事業者に加え、障害者が相談を行う際や、国や地方公共団体における相談機関等が相談対応を行う際等にも、相談事案に係る所管府省庁の確認のため参照され得るものであることから、対応指針においては、各主務大臣が所掌する分野及び当該分野に対応する相談窓口を分かりやすく示すことが求められる。   (2)対応指針の記載事項  対応指針の記載事項としては、以下のものが考えられる。なお、具体例を記載する際には、障害特性や年齢、性別、具体的な場面等を考慮したものとなるよう留意することとする。  ○ 趣旨  ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方  ○ 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例  ○ 事業者における相談体制の整備  ○ 事業者における研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度等の整備  ○ 国の行政機関(主務大臣)における所掌する分野ごとの相談窓口   3 主務大臣による行政措置  事業者における障害を理由とする差別の解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合などには、主務大臣は、法第12条に基づき、特に必要があると認められるときは、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとされている。また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律施行令(平成28年政令第32号。以下「施行令」という。)第3条により、各事業法等における監督権限に属する事務を地方公共団体の長等が行うこととされているときは、法第12条に規定する主務大臣の権限に属する事務についても、当該地方公共団体の長等が行うこととされている。この場合であっても、障害を理由とする差別の解消に対処するため特に必要があると認めるときは、主務大臣が自らその事務を行うことは妨げられていない。  こうした行政措置に至る事案を未然に防止するため、主務大臣は、事業者に対して、対応指針に係る十分な情報提供を行うとともに、事業者からの照会・相談に丁寧に対応するなどの取組を積極的に行うものとする。特に、事業者による合理的配慮の提供の義務化に伴い、事業者から様々な相談が寄せられることが見込まれることから、円滑な相談対応等が可能となるよう、各主務大臣は、相談事案に関係する他の主務大臣や地方公共団体など関係機関との連携を十分に図ること等が求められる。また、主務大臣による行政措置に当たっては、事業者における自主的な取組を尊重する法の趣旨に沿って、まず、報告徴収、助言、指導により改善を促すことを基本とする必要がある。主務大臣が事業者に対して行った助言、指導及び勧告については、取りまとめて、毎年国会に報告するものとする。 第5 国及び地方公共団体による障害を理由とする差別を解消するための支援措置の実施に関する基本的な事項 1相談及び紛争の防止等のための体制の整備 (1)障害を理由とする差別に関する相談対応の基本的な考え方  法第14条において、国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、人材の育成及び確保のための措置その他の必要な体制の整備を図るものとされている。  障害を理由とする差別の解消を効果的に推進するには、公正・中立な立場である相談窓口等の担当者が、障害者や事業者等からの相談等に的確に応じることが必要である。  国においては、主務大臣がそれぞれの所掌する分野ごとに法第12条に基づく権限を有しており、各府省庁において所掌する分野に応じた相談対応を行っている。また、地方公共団体においては、障害を理由とする差別の解消に関する相談につき分野を問わず一元的に受け付ける窓口や相談員を配置して対応する例、各部署・機関の窓口で対応する例などがある。  相談対応の基本的なプロセスとしては、以下のような例が考えられる。相談対応過程では相談者及びその相手方から丁寧な事実確認を行った上で、相談窓口や関係部局において対応方針の検討等を行い、建設的対話による相互理解を通じて解決を図ることが望ましい。その際には、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するとともに、個人情報の適正な取扱いを確保することが重要である。なお、相談窓口等の担当者とは別に、必要に応じて、相談者となる障害者や事業者に寄り添い、相談に際して必要な支援を行う役割を担う者を置くことも円滑な相談対応に資すると考えられる。  その上で、基本的な対応での解決が難しい場合は、事案の解決・再発防止に向けた次の段階の取組として、国においては、法第12条に基づく主務大臣による行政措置や、地方公共団体においては、前述の施行令第3条に基づく措置のほか、一部の地方公共団体において条例で定められている報告徴収、助言、指導、勧告、公表などの措置や紛争解決のための措置による対応が考えられる。  (相談対応のプロセスの例)   〇 相談者への丁寧な事実確認   〇 関係者(関係部局) における情報共有、対応方針の検討   〇 相手方への丁寧な事実確認   〇 関係者(関係部局) における情報共有、事案の評価分析、対応方針の検討   〇 相談者と相手方との調整、話合いの場の設定  なお、障害を理由とする差別に関する相談を担うこととされている窓口のみならず、日常的に障害者や事業者と関わる部局等も相談の一次的な受付窓口としての機能を担い得ることに留意する。   (2)国及び地方公共団体の役割分担並びに連携・協力に向けた取組  国及び地方公共団体には、様々な障害を理由とする差別の解消のための相談窓口等が存在している。法は、新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を図ることとしているところ、差別相談の特性上、個々の相談者のニーズに応じた相談窓口等の選択肢が複数あることは望ましく、国及び地方公共団体においては、適切な役割分担の下、相談窓口等の間の連携・協力により業務を行うことで、障害を理由とする差別の解消に向けて、効率的かつ効果的に対応を行うことが重要である。  相談対応等に際しては、地域における障害を理由とする差別の解消を促進し、共生社会の実現に資する観点から、まず相談者にとって一番身近な市区町村が基本的な窓口の役割を果たすことが求められる。都道府県は、市区町村への助言や広域的・専門的な事案についての支援・連携を行うとともに、必要に応じて一次的な相談窓口等の役割を担うことが考えられる。また、国においては各府省庁が所掌する分野に応じて相談対応等を行うとともに、市区町村や都道府県のみでは対応が困難な事案について、適切な支援等を行う役割を担うことが考えられる。  相談対応等においては、このような国・都道府県・市区町村の役割分担を基本としつつ、適切な関係機関との間で必要な連携・協力がなされ、国及び地方公共団体が一体となって適切な対応を図ることができるような取組を、内閣府が中心となり、各府省庁や地方公共団体と連携して推進することが重要である。このため内閣府においては、事業分野ごとの相談窓口の明確化を各府省庁に働きかけ、当該窓口一覧の作成・公表を行うほか、障害者や事業者、都道府県・市区町村等からの相談に対して法令の説明や適切な相談窓口等につなぐ役割を担う国の相談窓口について検討を進め、どの相談窓口等においても対応されないという事案が生じることがないよう取り組む。また、(3)の各相談窓口等に従事する人材の確保・育成の支援及び3の事例の収集・整理・提供を通じた相談窓口等の対応力の強化等にも取り組むこととする。   (3)人材の確保・育成  障害を理由とする差別に関する相談の解決を図るためには、障害者や事業者等からの相談を適切に受け止め、対応する人材の確保・育成が重要である。相談対応を行う人材は、公正中立な立場から相談対応を行うとともに、法や解決事例に関する知識、当事者間を調整する能力、連携・協力すべき関係機関に関する知識、障害特性に関する知識等が備わっていることが望ましい。国及び地方公共団体においては、必要な研修の実施等を通じて、相談対応を行う人材の専門性向上、相談対応業務の質向上を図ることが求められる。人材育成に係る取組に格差が生じることのないよう、内閣府においては、相談対応を担う人材育成に係る研修の実施を支援すること等を通じ、国及び地方公共団体における人材育成の取組を推進することとする。   2 啓発活動  障害を理由とする差別については、国民一人一人の障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられる。全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには、障害者に対する障害を理由とする差別は解消されなければならないこと、また障害を理由とする差別が、本人のみならずその家族等にも深い影響を及ぼすことを国民一人一人が認識するとともに、障害を理由とする差別の解消のための取組は、障害者のみならず、全ての国民にとっての共生社会の実現に資するものであることについて、理解を深めることが不可欠である。このため、内閣府を中心に、関係行政機関等と連携して、いわゆる「社会モデル」の考え方も含めた各種啓発活動に積極的に取り組み、国民各層の障害に関する理解を促進するものとする。また、各種啓発活動や研修等の実施に当たっては、障害のある女性は、障害があることに加えて女性であることにより合理的配慮の提供を申し出る場面等において機会が均等に得られなかったり、不当な差別的取扱いを受けやすかったりする場合があるといった意見があること、障害のある性的マイノリティについても同様の意見があること、障害のあるこどもには、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることについても理解を促す必要があることに留意する。   (1)行政機関等における職員に対する研修  行政機関等においては、所属する職員一人一人が障害者に対して適切に対応し、また、障害者や事業者等からの相談等に的確に対応するため、法や基本方針、対応要領・対応指針の周知徹底、障害者から話を聞く機会を設けるなどの各種研修等を実施することにより、職員の障害に関する理解の促進を図るものとする。 (2)事業者における研修  事業者においては、障害者に対して適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、研修等を通じて、法や基本方針、対応指針の普及を図るとともに、障害に関する理解の促進に努めるものとする。内閣府においては、障害者の差別解消に向けた理解促進のためのポータルサイトにおいて、事業者が障害者に対応する際に参考となる対応例等の提供を通じ、事業者を含め社会全体における障害を理由とする差別の解消に向けた理解や取組の進展を図ることとする。 (3)地域住民等に対する啓発活動 ア 国民一人一人が法の趣旨について理解を深め、建設的対話を通じた相互理解が促進されるよう、障害者も含め、広く周知・啓発を行うことが重要である。このため、内閣府を中心に、関係省庁、地方公共団体、事業者、障害者団体、マスメディア等の多様な主体との連携により、インターネットを活用した情報提供、ポスターの掲示、パンフレットの作成・配布、法の説明会やシンポジウム等の開催など、アクセシビリティにも配慮しつつ、多様な媒体を用いた周知・啓発活動に積極的に取り組む。 イ 障害のあるこどもが、幼児教育の段階からその年齢及び能力に応じ、可能な限り障害のないこどもと共に、その特性を踏まえた十分な教育を受けることのできる、権利条約が求めるインクルーシブ教育システムの構築を推進しつつ、家庭や学校を始めとする社会のあらゆる機会を活用し、こどもの頃から年齢を問わず障害に関する知識・理解を深め、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人であることを認識し、障害の有無にかかわらず共に助け合い・学び合う精神を涵養する。障害のないこどもの保護者に対する働きかけも重要である。 ウ 国は、グループホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して、周辺住民の同 意を求める必要がないことを十分に周知するとともに、地方公共団体においては、当該認可等に際して、周辺住民の同意を求める必要がないことに留意しつつ、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うことが望ましい。 3 情報の収集、整理及び提供  障害を理由とする差別の解消を推進するためには、事例の共有等を通じて障害を理由とする不当な差別的取扱いや合理的配慮の考え方等に係る共通認識の形成を図ることも重要である。内閣府では、引き続き各府省庁や地方公共団体と連携・協力して事例を収集するとともに、参考となる事案の概要等を分かりやすく整理してデータベース化し、ホームページ等を通じて公表・提供することとする。  事例の収集・整理に当たっては、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、特に障害のある女性やこども等に対し実態を踏まえた適切な措置の実施が可能となるよう、性別や年齢等の情報が収集できるように努めることとする。あわせて、海外の法制度や差別解消のための取組に係る調査研究等を通じ、権利条約に基づき設置された、障害者の権利に関する委員会を始めとする国際的な動向や情報の集積を図るものとする。   4 障害者差別解消支援地域協議会 (1)趣旨  障害を理由とする差別の解消を効果的に推進するには、障害者にとって身近な地域において、主体的な取組がなされることが重要である。地域において日常生活、社会生活を営む障害者の活動は広範多岐にわたり、相談等を行うに当たっては、どの機関がどのような権限を有しているかは必ずしも明らかではない場合があり、また、相談等を受ける機関においても、相談内容によっては当該機関だけでは対応できない場合がある。このため、国の地方支分部局を含め、地域における様々な関係機関が、相談事例等に係る情報の共有・協議を通じて、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止の取組など、地域における障害を理由とする差別の解消の機運醸成を図り、それぞれの実情に応じた差別の解消のための取組を主体的に行うネットワークとして、障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができることとされている。協議会については、障害者及びその家族の参画を進めるとともに、性別・年齢、障害種別等を考慮して組織することが望ましい。また、情報やノウハウを共有し、関係者が一体となって事案に取り組むという観点から、地域の事業者や事業者団体についても協議会に参画することが有効である。内閣府においては、協議会の設置状況等について公表するものとする。   (2)期待される役割  協議会に期待される役割としては、関係機関から提供された相談事例等について、適切な相談窓口を有する機関の紹介、具体的事案の対応例の共有・協議、協議会の構成機関等における調停、斡旋等の様々な取組による紛争解決、複数の機関で紛争解決等に対応することへの後押し等が考えられる。このほか、関係機関において紛争解決に至った事例や合理的配慮の具体例、相談事案から合理的配慮に係る環境の整備を行うに至った事例などの共有・分析を通じて、構成機関等における業務改善、事案の発生防止のための取組、周知・啓発活動に係る協議等を行うことも期待される。   (3)設置促進等に向けた取組  各地方公共団体における協議会の設置促進のためには、協議会の単独設置が困難な場合等に、必要に応じて圏域単位など複数の市区町村による協議会の共同設置・運営を検討することや、必要な構成員は確保しつつ、他の協議会等と一体的に運営するなど開催形式を柔軟に検討することが効果的と考えられる。  また、市区町村における協議会の設置等の促進に当たっては都道府県の役割が重要であり、都道府県においては、管内市区町村における協議会の設置・実施状況の把握や好事例の展開等を通じて、市区町村における取組のバックアップを積極的に行うことが望ましい。加えて、都道府県において組織される協議会においても、紛争解決等に向けた取組について、市区町村において組織される協議会を補完・支援する役割が期待される。内閣府においても、地方公共団体の担当者向けの研修の実施を通じ、地域における好事例が他の地域において共有されるための支援を行うなど、体制整備を促進する。   第6 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項  技術の進展、社会情勢の変化等は、特に、合理的配慮について、その内容、程度等に大きな進展をもたらし、また、実施に伴う負担を軽減し得るものであり、こうした動向や不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例の集積等を踏まえるとともに、国際的な動向も勘案しつつ、必要に応じて、基本方針、対応要領及び対応指針を見直し、適時、充実を図るものとする。基本方針の見直しに当たっては、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。対応要領及び対応指針の見直しに当たっても、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。  行政機関等においては、各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、高等教育機関に対し、入学試験の実施や国家資格試験の受験資格取得に必要な単位の修得に係る試験の実施等において合理的配慮の提供を促すとともに、国家資格試験の実施等に当たり、障害特性に応じた合理的配慮を提供する。民間資格の試験を実施する事業者に対しても同様に、試験の実施等に当たっての合理的配慮の提供を促す。また、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨や、技術の進展、社会情勢の変化等を踏まえ、適宜、必要な見直しを検討するものとする。   附 則  この基本方針は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行の日から適用する。   栃木県における障害者差別に関する相談窓口とあっせん   1 相談窓口  ○ 栃木県では、障害者差別に関する相談窓口を設け、相談を受けています。  障害者御本人や周りの関係者の方からの相談はもちろんのこと、事業者からの相談も含め、幅広く相談を受け付けます。    相談窓口 栃木県障害者権利擁護センター(平日 午前9時から午後5時)  電話番号 028-623-3139  メールアドレス tochigi-shougaishakenri@dream.jp  ファックス番号 028-623-3052    ○ なお、身近な県内各市町においても、障害者差別に関する相談をすることができます。  各市町における相談窓口の電話番号やメールアドレスについては、P.105の相談窓口一覧をご覧ください。  【参考情報】つなぐ窓口  内閣府では、障害者差別解消法に関する質問に回答すること及び障害を理由とする差別に関する相談を適切な自治体・各府省庁等の相談窓口に円滑に繋げるための調整・取次を行うことを目的に、令和5(2023)年10月から令和7(2025)年3月まで、「つなぐ窓口」を試行的に設置しています。   相談先に迷う場合は、こちらもご活用ください。   ○連絡先    電話相談: 0120 -262-701(毎日 午前10時から午後5時(祝日・年末年始除く))    メール相談: info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp 2 あっせん  県の窓口に相談しても、事業者との紛争事案が解決されない場合の仕組みとして、あっせんの制度を設けています。公正中立な栃木県障害者差別解消推進委員会が関わり、解決を図ります。 (1)あっせん ○ 県の相談窓口に相談をしても、障害者・事業者の間の問題が解決されない場合、紛争事案の当事者である障害者又はその保護者等は、県に「あっせん」を求める申立てをすることができます。あっせんとは、公正かつ中立な第三者機関である委員会による解決を目指すものです。 ○ あっせんを行うことが適当である場合、県から委員会へあっせんを行わせ、委員会は公正かつ中立に事実調査及び審議を行った上で、紛争事案の当事者にあっせん案(解決案)を示します。 (2)勧告 ○ あっせんを行っても問題が解決されず、それが特に悪質な事案である場合、委員会は、知事に対し「勧告」を行うよう求めることができます。 ○ 勧告とは、県から、事業者に対し、事業者による不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供など必要な対応をするよう求めるものです。 (3)公表 ○ 勧告を行っても、事業者が正当な理由なく勧告に従わないときは、県はその旨を「公表」することができます。 ○ なお、公表は社会的影響が大きいため、実施に当たっては、あらかじめそのことを事業者に通知し、意見を聴取するなど、慎重な手続を行います。 県内各市町における障害者差別に関する相談窓口一覧 県、市町名  電話番号  ファックス番号  メールアドレス 栃木県  028-623-3139  028-623-3052  tochigi-shougaishakenri@dream.jp 宇都宮市  028-632-2353  028-636-0398  u1904@city.utsunomiya.tochigi.jp 足利市  0284-20-2169  0284-21-5404  shogai-f@city.ashikaga.lg.jp 栃木市  0282-21-2219  0282-21-2682  f-service05@city.tochigi.lg.jp 佐野市  0283-20-3025  0283-24-2708  syougaifukushi@city.sano.lg.jp 鹿沼市  0289-63-2176  0289-63-2169  syogaifukushi@city.kanuma.lg.jp 日光市  0288-21-5174  0288-21-5105  shakai-fukushi@city.nikko.lg.jp 小山市  0285-22-9629  0285-24-2370  d-fukusi@city.oyama.tochigi.jp 真岡市  0285-83-8129  0285-83-8554  syakaifukushi@city.moka.lg.jp 大田原市  0287-23-8954  0287-23-1389  fukushi@city.ohtawara.tochigi.jp 矢板市  0287-43-1116  0287-43-5404  shakaifukushi@city.yaita.tochigi.jp 那須塩原市  0287-62-7026  0287-63-8911  k-hakaifukushi@city.nasushiobara.lg.jp さくら市  028-681-1161  028-682-1305  fukushi@city.tochigi-sakura.lg.jp 那須烏山市  0287-88-7115  0287-88-6069  kenkohfukushi@city.nasukarasuyama.lg.jp 下野市  0285-32-8900  0285-32-8601  syakaifukushi@city.shimotsuke.lg.jp 上三川町  0285-56-9128  0285-56-6868  fukushi01@town.kaminokawa.lg.jp 益子町  0285-72-8866  0285-70-1141  kenkou@town.mashiko.lg.jp 茂木町  0285-63-5631  0285-63-5600  hokenn.fukushi@town.motegi.tochigi.jp 市貝町  0285-68-1113  0285-68-4671  tyoumin01@town.ichikai.tochigi.jp 芳賀町  028-677-1112  028-677-2716  fukushi@town.tochigi-haga.lg.jp 壬生町  0282-81-1829  0282-81-1121  kenko@town.mibu.tochigi.jp 野木町  0280-57-4196  0280-57-4193  kenkoufukushi@town.nogi.lg.jp 塩谷町  0287-45-1119  0287-41-1014  hoken@town.shioya.tochigi.jp 高根沢町  028-675-8105  028-675-8988  fukusi@town.takanezawa.tochigi.jp 那須町  0287-72-6917  0287-72-0904  hoken@town.nasu.lg.jp 那珂川町  0287-92-1119  0287-92-1164  shakaif@town.tochigi-nakagawa.lg.jp ※ 相談は、県及び県内全ての市町にすることができます。