フォトとちぎ2014冬号
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 栃木県北部、那珂川町にある小さな山里、小砂地区が、このほど「日本で最も美しい村」連合に正式加盟しました。同連合は、フランスの素朴で美しい村を厳選して紹介するという「フランスの最も美しい村」をモデルに、日本の農山漁村の景観・文化を守り「最も美しい村」としての自立を目指そうと、05年に北海道美瑛町など7市町でスタートしました。同連合加盟には、審査員による現地調査など厳格な資格審査があるほか、5年ごとに運動が継承されているかなどの再審査があります。小砂地区の認定で連合加盟は全国54か所に、栃木県内では唯一です。 小砂地区は、関東屈指の清流・那珂川の東側にある人口800人ほどの小さな集落。緑豊かな里山に田園風景が広がっています。ここは縄文土器が数多く出土する地、焼き物の里、温泉地として広く知られ、歴史的建造物も点在しています。 「外から来た人はみんな、小砂はいい所だと言うんですが、何がいいんだか、気がつきませんよね。住んでいる人には」と、当時行政区長として連合加盟を推進してきた藤田清さん。現在は「小砂Village協議会」の会長を務めています。 「日本で最も美しい村」協議会加盟のきっかけは、都会から小砂に移り住んだ大熊貞雄さんからの提案でした。大熊さんは、海外生活が長く、フランスをはじめ海外の美しい山里をたくさん見てきました。小砂地域にも「フランスの最も美しい村」のような魅力があると「日本で最も美しい村」連合会加盟を勧めました。 「小砂には、陶芸家や彫刻家などたくさんの芸術家が移り住んでいます。また、地域の炭焼き名人小滝寅雄さんが焼く炭は、木口に美しい放射状の菊の文様をつくることから“菊炭”として全国の茶道家に愛用されています。茶道が芸術ならその炭もまた芸術。地域の人たちの多くが『日本で最も美しい村』加盟への取り組みを通じて、小砂の魅力を改めて認識しました」と藤田さんは言います。 この地域資源をうまく活用できないだろうか。藤田さんは、この里に若者を呼び込み、大胆にも現代アートの森にしようと考えました。昨年5月、那珂川の下流に位置する茨城県那珂湊市で毎年アート展を開催している小佐原孝幸さんの協力で「小砂環境芸術祭」を開催しました。芸術祭の大賞受賞作品は、美術大学の学生たちが1か月以上地域に滞在して制作した彫刻群。杉林の間伐を利用して、都会の人々を林の中に再現しました。協議会ではこの森を核に地域資源を有効に活用し、地域づくりを進めることにしています。 「学生のパワーはすごいね。われわれ地域の老人だけでは、いくら、話し合っても、行動に結びつかないんです。活性化のキーワードは、よそ者・若者・ばか者と言われます。第三者の視点を持った“よそ者”行動力のある“若者”そして一生懸命に打ち込める“ばか者”とが三位一体となって、地域の活性化を実現し、継承してゆきたい」と藤田さん。栃木県初の「最も美しい村」里山に豊富な地域資源三位一体で地域を元気にシリーズ●とちぎのひと人フォトとちぎ2014冬21

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